Our fights
「ちょっと、まだ?」
「できたら教えるっつったろ!黙って待てねーのか!お前は!」
私はノブの指示で浜辺に座ったまま自分の視界をふさいでいる。
ノブはノブで何か企んでいるらしいが、それはできるまで秘密にしておきたいらしい。
静かになった浜辺は波の音とノブの独り言しか聞こえなかった。
「っし!できたぁ!」
突然の叫び声と共に、腕を引っ張られる。
「ほら、できたぞ!こっからはお前も手伝え!」
「はぁ?」
私の腕を掴んだまま浜辺の中心部にまでつれてこられる。
「いいか、お前はこっから順番に火をつけるんだぞ、いいな。俺は向こうからだ」
見ると目の前には砂に刺さった花火が一列に並んでいた。
よくもまぁこんなに刺したと呆れるくらいだ。
列の先の方を見るとノブは花火の列に沿って走り出していた。
「わかってるな!手早くだぞ、手早く!!」
そう叫び終わった時には既に反対側の花火からの火花が見えていた。
私も急いで後から手渡された予備の花火に火をつけ、端から順番に手早く火をつけていく。
きれいに一直線に並べられた花火。
その1本の光の道は両側からどんどん伸びていく。
そんな花火の道を作っていくのは思いのほか楽しく感じた。
そして、遠くにいたノブがどんどん近づいてくる。
「お、俺の方が沢山つけてるかも!」
「えー!私の方が早いよ!」
「最後の1本、俺がもらい!!」
「あーっ!!」
最後の1本をノブに火をつけられてしまった。
「よっしゃ、俺の勝ち!」
「いいけどね…別に」
誇らしげに仁王立ちをするノブを軽くあしらい、私は端から次々と消えていく花火の道を眺めていた。
「ノブにしちゃ、いい考えだったんじゃない?これ」
「なんだよ、疑ってたのかよ」
「別に。ただ、何するのかな~と思って」
「ちぇっ。バカにしやがって」
口を尖らせながらもノブも花火を見つめていた。
最後の1本が消えるまで。
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