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Our fights


「おい、ロウソクちゃんと持ってきただろうな」


「うるさいなー、ちゃんと持ってきたよ。それよりノブこそバケツ用意したの?あと花火持ってよ、重たいんだから」


「うるせー!わーってらい!」



日が落ちる頃にノブの家を訪ねると、すでに準備万端で待ち構えていた。


…なんか甚平まで着て変な帽子までかぶってるし。



「…何、その格好」


「花火だろ?雰囲気雰囲気!」


「…その帽子は?お父さんから借りてきたの?」


「これは自前だ、自前!」



私は持っていた「変なの」と言いながら花火の半分以上をノブに押し付けるようにして渡す。


ノブは渋々と受け取りつつも、数分後には大量の花火を抱えながら今にも鼻歌でも歌いそうな調子で歩いている。



「俺さ、一度に沢山花火やるの子供の頃からの夢だったんだよな~。お前の親父さんに感謝しないとな!」


「…その夢、継続中だったんだ…」


「悪ぃか!いいだろ!ささやかで可愛い夢じゃねぇか!」


「…そうだね、ノブにしちゃ可愛い夢だね」


「だろ?」



…ダメだ。棒読みの皮肉が通じてないほど浮かれてる。


だって、なんかスキップまでしそうな勢いだし。


「幸せそうだなぁ」と思いながら足取り軽いノブの後姿を見る。


でも、こんなに沢山の花火を一度にやるのは初めてかもしれない。


ワクワクする気持ちはわからなくもない。



「あ、ちょっと!ノブ!待ってよ!!」



いつの間にか開いていたノブとの距離を縮める為に、私は持っていた花火を持ち直して走った。






たどり着いた場所は日が落ちきった海岸。


海水浴の季節は過ぎているので人気はあまりなく、時々吹く海風は少し肌寒いくらいだ。


ノブはそんな状況に非常に満足げに海に向かって腕組みしている。



「よぉし!邪魔するものは何もねぇ!ほら、ロウソク用意しろ!」


「仕切るな!」



用意したロウソクに火をつけるとノブは待ってましたとばかりに次から次へと花火に火をつけていく。



「手持ち花火の醍醐味といったらこれしかねぇだろ」



見ると両手に持った何本もの花火全てに火をつけ、鮮やかに振り回している。



「ちょっ…危なっ!」


「広い場所で大量の花火!どっちが一度に沢山つけられるか、勝負だ!」


「高校生なのに?くだらなっ」


「ははーん、さてはこの俺に負けるのが怖いんだな?」



その言葉に私はなぜか反応してしまい、気が付けばムキになってノブと一緒に花火を次々と点火していた。


それでも大量の花火を消費しきれずにいた。


結構な時間やっていたと思うんだけど…



「まだ残ってるのか…」


「なんかもう疲れちゃったよ」



なんだかんだで手持ち花火で私たちは大いにはしゃいでしまい、余力わずかといった感じになっていた。


未だ残る花火を目の前に二人で砂浜にしゃがみこむ。



「俺の夢がこんなに大変なものだったなんて」



ノブはそう言ってオーバーにうなだれている。


ふぅ、とため息を付いた後、私は目の前の花火の袋に手を伸ばす。



「どうするの、まだ残ってるよ。とりあえず今度は座りながらやろうよ」



袋から花火を取り出そうとすると、ノブはガバッと向き直り、目を輝かせた。



「ちょっと待て、俺、いいこと思いついた」



顔を上げてニヤリと笑うそれはよからぬ事を考えている印だ。


何を思いついたのか検討も付かない私は不振な顔をして首を傾げるしかなかった。


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