甘いのはお好き?


「ハルコさん、開けてみてもいいですか?」


合作とはいえ「晴子からの手作りのバレンタインチョコ」

その事実には変わりはなく、超前向きな彼が導きだしたこの結果に、すっかり立ち直った桜木はいつものようにホンワカとしている。

ゆっくりを箱の蓋を開けた桜木は感動のあまり声をあげる。


「おおっ!スゴい!」

「どれどれ?」


その声があまりにも大きいので馨は箱の中を覗きこむ。

ココアパウダーに包まれた一口程の丸いトリュフチョコが綺麗に並んでいる。

桜木はチョコを壊れ物を扱うかのように丁寧に一粒取り出し、ゆっくりと口に入れる。


「…美味い!美味いっすよ!コレ!!さすがハルコさん!」

「ホント?ありがとう、桜木くん!」


桜木は美味しさのあまり感激の涙を流している。

そんな桜木の背後でも同じように感激にウチ震えている男がいた。


「ア、アヤちゃん…美味しいよ…コレ…」

「ったく、大げさなんだから、アンタは」


彩子は呆れながらも満更ではない顔をしている。

そんな両者のやり取りを見て、馨は「面白い」とクスリと笑う。

一粒をじっくり味わったところで桜木が尋ねる。


「ハルコさん、この美味しいチョコはどうやって作ったんですか?」

「これ?少し溶かしたチョコに生クリームを混ぜて丸めて作るの。トリュフっていうのよ」

「なるほど、トリュフ…」


フムフムと頷く後ろで馨が嫌悪感を少し出しながらポツリと呟く。


「……チョコに…生クリーム…」


馨の声に気づいた桜木が馨にチョコの箱を差し出す。


「どうですか、馨さんもおひとつ…」

「えっ!私はいいよ」

「そんな、遠慮なさらず。美味しいですよ!」

「いや、ほら、せっかく花道の為に作ったらチョコだもん、花道が食べなよ」


馨は慌てながら手をヒラヒラさせて立ち去ろうとする。


「あの、よかったら一つ食べてみて。自信作だから」


晴子が少しモジモジしながら勧めるも、馨の後退りは止まらない。


「ごめんね、ほら、今、動いた後だから…私、喉乾いちゃってて…」

「あ、それなら余計に喉乾いちゃうかしら…」

「そ、そう!あの、ちょっと外でお水飲んでくる!」


馨はそう行って体育館をそそくさと出ていった。


「どうしたんすかねぇ、あんなに慌てて…」


桜木と晴子は不思議そうな顔をして馨が出ていった扉を見つめていた。

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