Our fights


「てめーにゃ負けねーぞ!」


私に負けると人差し指をこちらに突き出して闘志をむき出しにする。


それは幼馴染のノブの口癖のようなものだった。


いつも些細なことで私にライバル心を抱き、勝負めいたことを仕掛けてくる。


昔からそうだった。


かけっこだとか走り幅跳びだとか、牛乳の一気飲みだとかババ抜きだとか。


本格的な勝負から「こんなのでいちいち勝負してくるな」というものまで。


本当に何かにつけて勝ち負けで相手にされるのでこちらとしては気が参っている。


私の家にテレビゲーム目的で遊びに来たノブはまたも私に勝負を仕掛ける。


今日の勝負はというとお目当ての発売されて間もない対戦型格闘ゲームだ。


私を女だからと言ってバカにしてはいけない。


このゲームを買ったのは私だし、ゲーマーだと自負している私に勝とうだなんて100万年早いのだ。


私はこれ見よがしにノブを…いやノブの操作するキャラをコテンパンにKOしてやった。



「くっそー…なんで勝てねーんだ…」



両手でコントローラーを握り締めながら恨めしげにテレビ画面で倒れている自分のキャラを睨みつける。


かれこれ1時間近く対戦しているがノブは連戦連敗。


私も正直飽き飽きしてきた。



「ノブは大技狙いすぎなんだよ。大技は発動までに時間がかかるんだからスキが出るんだよ」


「うるせー!わーってらい!次はぜってー負けねーからな!」


「えー!?まだやるの?」


「当たり前だ!」



私はしぶしぶ対戦を再開した。


もちろん、勝負は説明するまでもなく、私の圧勝だった。







夏の夜の暑さが和らいできたある日、お父さんが大量の花火を抱えて帰ってきた。


少し時期が過ぎた花火が格安で売られていたとの事で、その量は両手にいっぱい。



「どうすんのよ、こんなに沢山の花火…」


「隣のノブ君とやればいいじゃないか。小学生の時よくやってたじゃないか」


「そりゃやってたけど…この量を二人でやれっていうの!」


「大丈夫。ノブ君なら一気に使い切っちゃうさ」



なにが「大丈夫」なんだろう…


確かにお子様なノブなら大量の花火を見ればこれ見よがしに火をつけまくって楽しむだろうけれど。


せっかく買ってきてくれた花火を無駄にするわけにも行かないので、次の日ノブにこのことを話した。



「そんなに沢山花火あんのか!!!やろうぜ!面白そうじゃん!!」



…目を輝かせながらそう言うので今度の金曜の夜に「花火大会」を決行することにした。



1/7ページ
スキ