夏祭り


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今年も花火大会の日がやってきた。


金魚の浴衣を毎年着るのが恒例になっている。


金魚すくいをして、わたあめを買うのも毎年のこと。


花火を見る場所も毎年同じ場所。


今年も同じ場所で花火を見る。


隣にいるのは…




「お前、毎年その金魚の浴衣なのな。もしかしてお気に入りだったりする?」


「お気に入りだから着てるんだよ、悪い?」


「悪かねーよ。似合ってるし」


「…ありがとう」



その時、大きな花火がドォンと音を立てて打ちあがった。


その花火を見上げて呟く。


「これはね、私のお気に入りなんだよ…」


「え?何?花火でよく聞こえなかった」


「んーん、ひとり言」




この花火を見るたびに思い出す。


アメリカに旅立ったあの人の事を。


結局あれから自分の気持ちを伝えることなく高校生活は過ぎていった。


未練はないけれど、あの日の思い出だけは私の中でいつまでも残っていて消せずにいた。


思い出すたびにドキドキする。


あの時、私の気持ちを伝えていたらどうなっていたんだろう。


もうちょっと勇気があれば…違う方向に動いていたかもしれない。


軽く後悔するけれど、今、私の隣にいる人と出会えたのも違う方向に動かなかったからだと思うと「こんな方向でも構わない」と思える。


でも、


これからもここで花火を見るたびに思い出すんだろう。


あの夢のような夏の思い出を…。




BGM:「夏祭り」ジッタリンジン
2011.07.24


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