夏祭り
空を彩っていたスターマインが終わり、今は大きな花火が2、3発づつゆっくりと花開いている。
私たちはただ黙って空を見つめていた。
花火と花火の合間の静寂もなぜか気にならなくなっていた。
一際大きな三尺玉が上がり、爆発音が暗闇でいつまでも鳴り響く。
空気を振るわせる音が消えた頃、宙を舞っていた私の意識を取り戻した。
再びチラリと流川くんを見ると、彼は暗闇に戻った夜空をじっと見つめたままだった。
その横顔を見て、私の心臓は急に鼓動を早めた。
今なら、言えるかもしれない…
私の気持ちを。
私の、流川くんに対する気持ちを。
誰もいないこの場所でなら言えるかもしれない。
二人でいるこの状況なら言えるかもしれない。
私の気持ちがだんだん現実味を帯びてくる。
今まであんなに幻想にふけっていたのが嘘のようだ。
きっと…この雰囲気なら…言えるかもしれない。
絶好のチャンスだと思った。
チャンスだ、と思ったけれど…
いざとなると何の言葉も出てこない。
一言、話しかけて…自分の気持ちを言えばいいだけなのに。
そう、「好きです」という言葉を…
それだけなのに、最初の一言が出てこない。
言おうとすればするほど、なぜか言い出すタイミングを掴めなくて…
喉の奥で言葉が詰まって出てこなかった。
なんで言わないんだろう…私…
今しかないのに、
今しか…
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