夏祭り


聞こうか聞くまいか…次の言葉を探していると、大きな爆発音と共に目の前がパァッと明るくなる。


音にビックリして見上げると、目の前には大きな打ち上げ花火。


木々に囲まれている神社の、木と木の間が大きくなっているところにちょうど真ん中に花火が見えた。


階段に座っているまさにこの場所が絶景ポイントだった。


すごい、と思う暇なく打ち上げ花火はどんどんその花を開かせていく。


体の奥底にに響き渡る花火の音。


自分の視界ではとらえきれないほどの大きな花火。


沢山の光の大群に、私は一瞬のうちに心を奪われていた。


そして、隣に座る彼も無言でその花火を見ている事に少し後で気が付いた。


真剣に花火を見上げる顔を本人に気づかれないようにこっそりと見つめる。


遠くを見つめるその瞳には、花火の姿が映りこんでいた。


なんて真っ直ぐな視線なんだろう…


この瞳には見覚えがある。


それはバスケをしている時と同じ。


真っ直ぐ前を見据えて…まるで先のことが見えているかのような、そんな力強い瞳。


思わず見入ってしまう。


何を考えているんだろう。


そして、彼には何が見えているんだろう。


その瞳の奥に映るものは、一体何なのだろう。


そんな事で頭がいっぱいになって、私は無意識に質問をぶつけていた。



「流川くんは、花火の向こうに何が見えるの…?」



そして、質問をぶつけられた流川くんも、多分無意識であろう回答を私に返してきた。



「……アメリカ」


「アメリカ…?」


「あぁ…」


「そうなんだ…」



どうしてかわからないけれど、私はその言葉をすんなりと受け止めていた。


『流川くんの視線の先にはアメリカが見えている』


よく考えたらどういう事なのかわからない事なのに、私はそんな事を素直に理解していた。



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