HAPPY BIRTHDAY


「寝ぼけすぎだ、バカ」

「ば、ばかって言った…」


夕食後、リビングのソファーで二人でくつろぐ。

普段使わないような言われ方をしてショックを大きくする馨。

からかうなら夕食時に両親と一緒にすればいいのに、わざわざ時間をおいてからかうなんて、この男も性格が悪い。




両親が見ているテレビでは豪華な衣装に身を包んだ大物歌手がその自慢の歌声を披露している。


馨は横目でそれを見ながら、バツが悪そうに何も言えずにいた。


「今は目ぇ覚めてるんだろうな」

「…ハイ。昼寝しましたら」

「俺が帰ってきたのは何時だったかな…」

「ゆ、夕方…」

「すげー熟睡してたな」

「ハイ。たっぷり寝てました」

「このソファーでな」

「ハイ。このソファーで、たっぷりと」


…やっぱり性格が悪い。

チクチク言われながら馨はうなだれていく。

第一「寝ていろ」と言っていたくせに、じわりじわりと攻めていく感じが性格の悪さを助長している。

背もたれにあったクッションを前に持ち替え、ぎゅっと抱きしめる。


昼間はあのまま熟睡してしまい、流川に鼻を思いっきりつままれて何とも情けない声を出して飛び起きた。

…思い出すだけで恥ずかしい。


「そういう楓はどうなのよ。いつも寝てばかりの人が夜更かしなんて考えられないんだけど」

「俺ならダイジョーブ」


その言葉通り、普段なら眠くて朦朧としてそうな時間なのにしっかりと目が開いている。

今は本当に大丈夫そうだ。


口では強気な事を言っているが、いつものようにまた途中で寝てしまうに違いない。

馨はそう思っていた。


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