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HAPPY BIRTHDAY


12月

外を歩くと氷の様に冷えた風が全身の筋肉を硬直させる。

昼間は晴れていればそれなりに暖かいのだが、日が落ちると共に先程の暖かさが嘘だと思うほど寒くなる。

冬の寒さはニガテ…

だから南側に位置するリビングでボンヤリするこの時間は至福の時でもある。


今日は久々に家でのんびりしていようと思い、リビングのソファーにもたれかかっている。

窓側に位置するソファーには太陽の暖かな光が差し込み、ポカポカと体を照らす。


「…ねむ……」


背もたれにもたれかかり、背伸びしながら馨は大きなあくびを一つする。


「…でけぇ口」


カチャリと開いたドアに反応して視線をそちらに向けると呆れ顔の長身がいた。

いつものジャージ姿ではなく、黒のジーンズに黒のダウンジャケットを着ている。


「ん、どこか行くの?」

「まぁな」


普段ははジャージで外出する彼。

バスケ以外の事で外出する事は服装を見てすぐわかった。


「どこ?一緒に行っていい?」


バスケ以外の用事で外出なんて珍しい。

どこに行くのか面白そうと思い身を乗り出す。


「ダメ」

「う…」


残念。

願いも空しく、視線を反らされ即答で断られた。


「どうしてもダメ?」

「ダメ」

「ちぇっ…。」


ちょっとふてくされ気味にソファーにドサリと座り直す。

それを見て流川は出て行こうとするが、


「…あ。」

「ん?」


リビングのドアを閉めようとしたところで流川は何か思い出したかのように声に出す。

そして馨をちょんと指差し、念を押すように呟く。


「馨、今夜は寝るな」

「…は?」

「寝ようとしたら叩き起こす。今から寝ておけ。」

「え、なんで、」

「…寝かせないからな」

「え、ちょっと待…」


『待って』と言い掛けたところで、「じゃ」と短い返事だけを残し、ドアを閉められそのまま出掛けてしまった。


取り残された馨は意味が判らないままだった。


「え、待ってよ…。だって、意味わかんないし…」


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