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恋するあっくんシリーズ

「ピンチ!ピンチ!あっくん史上最大の緊急事態発生や!」

「なんやの土屋。登校していきなり騒がしいな」

「だからあっくんに史上最悪のピンチ!」

「どないしたん?聞いたるから少し落ち着き」

「ここ!あっくん自慢のサラサラヘアーが!」

「はぁ…何かと思ったらただの寝癖やないの。そんな事でいちいち騒がんとき、土屋」

「なにゆーてんの!このあっくん自慢のサラサラの髪の毛、ここだけおかしな方に跳ねてんやで!」

「『この』ってどの土屋やねん」

「起きてからずっと直してるのに全然治らんのよ!?…このままじゃ…このままじゃ、あっくんの爽やかで清楚なイメージガタ落ちや!」

「……もうどっから突っ込んでええんかわからんし。」

「この緊急事態どないしたらいい?」

「だぁ!そんな捨てられた子犬見たいな目で見んといて!!…まぁ、変な寝癖ついててみっともないのは確かやな。ちょい待ち、土屋」


……ゴソゴソ


「うち、ワックス持ってんねん。これ使って無造作ヘアーで誤魔化せばええんちゃう」

「流石ナイスアイディア!…うっ…あっくんのために……感激や……でもな、あっくんめっちゃ嬉しいけど、実はワックス使った事ないねんな…」

「はぁ?土屋ワックス使った事ないん?」

「あっくん、このサラサラの髪を生かした髪型にずっとこだわってんねん。ワックスつけるとこのサラサラが死んでまうやろ?」

「『死んでまうやろ?』って、うちに同意を求められても…」

「というわけで、よろしく頼むわ」

「なにを」

「んもう、照れ屋さんやね。不器用なあっくんの為に髪セットして」

「なっ!なんでうちが!」

「あっくんのこの髪に触れられるのは、目の前にいるお前だけやで…」

「うわっ!気色悪っ!鳥肌立つからやめんかいっ!」

……


「ったく…なんでうちが…ほら、早く座って後ろ向き!」

「なぁなぁ…」

「なんや」

「我慢できなくなったらあっくんの大きな背中に飛び込んでもええんよ」

「するか!そんなこと!なんやねん、『我慢できなくなったら』て。アホな事ゆわんとき!!」

「んもう、照れ屋さんやね~」

「照れとらんわ!!」

……


「できた!ほれ、鏡」

「どれどれ?………あっ、これはあかんわ…」

「えっ、どないした?気に入らんかった?」

「あかん……流石あっくんや……無造作ヘアーもバッチリ決まっとる……完璧や…」

「………」

「ほらほら、我慢せんと、今すぐあっくんの胸に飛び込んでおいで」

「我慢できんから今すぐここから立ち去ることにするわ」

「えっ、ちょっと待って!!!あっくんを一人にせんといて~~あっくん寂しいて死んでまうわ!」

「知らんわい!」


おわり

2010.06.19.
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