輝き

翌日の放課後、また体育館へ向かう。

今日は流川親衛隊より早く行かなければ……

だって後ろから見てると三井先輩のバスケがちゃんと見えないし、声も黄色い声援でかき消されてしまう。

ツカツカと急ぎ足で体育館に向かう。




体育館に着いてみると、扉には誰もいなかった。


『よし!一番のり…!』


心の中でガッツポーズをする。

今日は一番前で見れる。

運がよかったら、こぼれたボールがこっちに向かってきて…それを私が拾って…三井先輩が取りに来て…


「ありがとよ」


なんて声をかけてくれるかも……

勝手な妄想が頭の中を一瞬で駆け巡り、胸の高鳴りが一層強くなる。

そんなアホな妄想をしている間にバスケ部の練習は始まった。

ギャラリーに親衛隊の姿はない……今日は私だけのようだ。

何かと好都合だが、やはり1人だけで見ているというのは気恥ずかしい。

いかにも「目当ての人を見に来ています」な状況……


(帰っちゃおうかな…)


目の前でバスケをしている相手を見たいが、なんだかソワソワしてしまう。


(……やっぱり帰ろう)


練習風景をよく見れるこの状況は喜ばしいが、恥ずかしさの方が上回っている今は、これ以上見ている勇気はない。

くるりと後ろを振り返り、立ち去ろうとした瞬間


「危ねぇっっっ!!」


……え?


ドカッッッ!!!


『いたぁ!!!』


突然肩に強い衝撃。

なんだなんだ?

訳が分からない。


「おい、大丈夫か?」


後ろから低いトーンの声。


(この声!!)


聞き覚えのある声に反応して振り返ると……


「ワリィ、ルーズボール拾い損ねたんだ。痛かっただろ?」


声の主は…三井寿…!!


『ぎゃああああ!!!』


突然目の前にいるもんだから、可愛げもない叫び声をあげてしまう。


「ぎゃああああ、って…俺はバケモンか…」


そんな、いきなりアナタが目の前にいたら悲鳴あげます…


『ご、ごめんなさい!ボールですね!?コレどうぞ!』


きっとその時の私はビックリするくらい早い動きをしたんだと思う。

サッと転がっているボールを拾い上げ、ズイッとボールを差し出して逃げるように体育館を後にした。

……んだと思う。

突然の出来事であまりよく覚えていない。


「あ…!おいっ!」


とにかく猛ダッシュで走り去った。


「なんだ、アイツは…」




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