甘いのはお好き?


……………ぶっ


突然馨がお腹を抱えて笑いだす。


「あはははは!!怒ってないよ、ナニ言ってるの?ホント面白いね、楓は!……ぷっ…あはははは!!!」

「……?」


馨の怒りを食らう覚悟をしていた流川だったが、逆に笑わせてしまったようで頭にハテナマークが沢山ついてしまう。


「怒って、ナイ…」


ポカンとする流川を尻目に馨の爆笑は止まらない。


「最初は怒ってたけど、もう忘れちゃったよ」


ツボに入ってしまった笑いが止まらない。

なんでこんなに可笑しいのかもわからなくなる程だ。

わかるとするなら、それは「嬉しさ」だろうか。

怒っていた事がちっぽけに思えるほど、今の感情は嬉しさでいっぱいだ。


「ホラ、いつまでも笑ってねーでさっさと乗れ。寒い」

「…ああ、そうだね。体冷やして風邪でも引いたら彩子先輩に怒られちゃう」


笑いで出た涙を拭いて、自転車の後ろに足をかける。

流川は馨が乗った事を確認し、ペダルに力を込める。

一気にスピードが上がり、二人の髪を巻き上げる。

風が冷たい。

頬を冷たい空気がピリピリと刺激する。

髪もひんやり冷たくなっているのが触らなくても感じられる。

一人で歩いていた時に考えていた通り、風が一層強くなって寒い。

でも、不快ではない。

こういう風も悪くない。


「…帰ったら熱~いお茶でも飲みますか」

「おー」


そう言うと流川は自転車の速度を少し速めた。



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