春 ~Spring~
私は冬があまり好きではなかった。
寒いからという気候的な問題ではなくて…
別れや出会い。そういう「節目」というものに差し掛かっていくという雰囲気がどうも好きではない。
夏や秋や冬はただゆっくりとその季節が来るのを待っていればいいのに、「春」という季節は何かにつけて「節目」にされる。
冬はその準備段階というというか…そういうソワソワした気持ちがあるので好きにはなれなかった。
今もこうして街中を歩けば「春はもう少しだ」とソワソワしてしまう。
道沿いにある花屋を何気なく見ると、あの日ライブハウスで貰った花束と同じ花が店の片隅に置かれていた。
自然と足を止めて見入ってしまっていた私は店員さんを呼んだ。
私はその花を小さな花束にしてもらった。
つい、…懐かしかったから。
あの人から貰った花束を見て、あの人を思い出したから。
部屋に帰って適当なガラスのコップに小さな花束を活け、テーブルの中心に置いた。
丁度南側に位置するこの部屋は冬なのに暖かい。
そして、花を置いた途端にその暖かさが増したように感じた。
私はテーブルの前に座り、ノートを開く。
花を見ながら何かフレーズが浮かびそうな気がして。
だけどその花を見て思い浮かぶフレーズはどんなに考えても一つしかなかった。
思わず顔を伏せてしまう。
「…会いたいな。会いたい」
冬が来るたびにこんな気持ちになる。
気温の暖かさにまどろんでいると、切ない気持ちになるのと同時にワクワクした気持ちになる。
気温が暖かいせいじゃない。
今が「冬」だからだ。
冬の次の季節は春。
春がくれば、あの人に会える。
それぞれの夢に向かって別々の道を歩いた私たち。
私とあの人、より大きくなって、会える。
私は冬が好きではなかった。
でも、いつの間にか好きな季節になっていた。
春が来るたびにあの人に会える。
この冬が終われば、…あの人に。
この前の春よりより成長しているであろうあの人に。
私も同じくらい成長しているだろうか。
そうだといいのだけれど。
…そういう気持ちが冬を好きにさせた。
春まであと少し。
冬 ~winter~
寒いからという気候的な問題ではなくて…
別れや出会い。そういう「節目」というものに差し掛かっていくという雰囲気がどうも好きではない。
夏や秋や冬はただゆっくりとその季節が来るのを待っていればいいのに、「春」という季節は何かにつけて「節目」にされる。
冬はその準備段階というというか…そういうソワソワした気持ちがあるので好きにはなれなかった。
今もこうして街中を歩けば「春はもう少しだ」とソワソワしてしまう。
道沿いにある花屋を何気なく見ると、あの日ライブハウスで貰った花束と同じ花が店の片隅に置かれていた。
自然と足を止めて見入ってしまっていた私は店員さんを呼んだ。
私はその花を小さな花束にしてもらった。
つい、…懐かしかったから。
あの人から貰った花束を見て、あの人を思い出したから。
部屋に帰って適当なガラスのコップに小さな花束を活け、テーブルの中心に置いた。
丁度南側に位置するこの部屋は冬なのに暖かい。
そして、花を置いた途端にその暖かさが増したように感じた。
私はテーブルの前に座り、ノートを開く。
花を見ながら何かフレーズが浮かびそうな気がして。
だけどその花を見て思い浮かぶフレーズはどんなに考えても一つしかなかった。
思わず顔を伏せてしまう。
「…会いたいな。会いたい」
冬が来るたびにこんな気持ちになる。
気温の暖かさにまどろんでいると、切ない気持ちになるのと同時にワクワクした気持ちになる。
気温が暖かいせいじゃない。
今が「冬」だからだ。
冬の次の季節は春。
春がくれば、あの人に会える。
それぞれの夢に向かって別々の道を歩いた私たち。
私とあの人、より大きくなって、会える。
私は冬が好きではなかった。
でも、いつの間にか好きな季節になっていた。
春が来るたびにあの人に会える。
この冬が終われば、…あの人に。
この前の春よりより成長しているであろうあの人に。
私も同じくらい成長しているだろうか。
そうだといいのだけれど。
…そういう気持ちが冬を好きにさせた。
春まであと少し。
冬 ~winter~