甘いのはお好き?
「どうもありがとうございました~」
「こちらこそ、ありがとうございました!」
「弟さんとまたいらっしゃいね。楽しみにしてますね」
「ええ、是非!」
入った店で買い物を済ませた馨は、少し年配の女性店員と仲良く会話し、ウキウキと駅ビルを後にする。
「いい買い物したなぁ~楓、喜ぶかな」
白い上品な小さな紙袋を丁寧に肩掛け鞄にしまう。
いいお店を見つけた。あんな店があったなんて。
肩にかけた鞄を揺らさないよう、人通りのある横断歩道を小走りで駆け抜ける。
宝物を見つけたようで心が踊り、足取りも軽くなる。
「…ニヤニヤ女」
「うわっ!!!」
横断歩道を渡りきったところで急に虚をつかれて飛び上がりそうになる。
「か、楓……ビックリした…」
目の前に自転車を止めてこちらを見ている流川がいた。
「なんだ、ニヤニヤして」
「失礼な。ニコニコしてると言ってよね」
あからさまに頬を膨らませる。
本当に一言多い。
「悪りぃ…」
「へ…?」
急に謝られて頭の中が一瞬で真っ白になる。
「その、先に帰って悪かった」
「あ…」
口数が少ない彼の、突然の発言は未だにビックリさせられるが、言いたい事はすぐにわかった。
しかも自分が置いていかれた事に対して怒っているのを前提にしている。
先に帰り、とうに家にいてもおかしくない程の時間が経過しているのに、自分の目の前にいる。
それだけで。
その行動だけで…嬉しくなる。
「それで、わざわざ?」
「お前、怒るとコワイし。ワザワザ迎えにきた」
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