#14 成長


流川は何か掴んだ。

彼のプレイはどんどん変わっていった。

ただの1on1ではない、これはチームメンバーがいる「試合」なのだと。

彼が出した「答え」

それは


「あっ!!!」


流川の思いがけない行動に沢北は、驚く。

流川が沢北との1対1の場面でパスを出す。

パスは赤木に渡り、ゴールが決まる。


(こいつがパスを……いい判断だ)


沢北は流川の行動を見て、ますます嬉しそうに微笑む。

馨もまた、流川の思いがけない行動に少なからず動揺する。


「楓が、1対1でパス…?」


今までそんなプレイはあまり見なかったが…


「楓……何か変わった…?」


パスを出した事が布石となり、沢北のディフェンスに僅かな隙が生まれ、流川はついに沢北を抜く事に成功する。


「抜いた!!!」


その一瞬の姿が馨の頭にしっかりと刻み込まれる。

その後、流川はパスを出すことにより湘北に得点をもたらす。


「………楓…」


試合中でありながら、何か変わっていく流川のプレイ。

呆然としていると、会場から一斉に声が沸く。


ワァァッ!!!


「!!」


馨が歓声に反応してフロアを見ると流川にパスが渡ったところだった。


「!!」


流川は自分にパスが渡った瞬間の歓声に目を見張る。

何回もあった沢北との1対1の場面で、会場が彼のプレイを見守る。

流れを変えた彼。次は何をやってくれるか、と。

一瞬の沈黙。

そして一瞬にして、流川はゴール下へ。

流川がシュートに跳ぶ。


「あっ……!!!」

「こいつ………!!」


馨と沢北が真っ先に反応した流川のシュート。

流川が放ったボールは、ブロックに跳んだ河田の腕の上を通り、リングをくぐる。


「あのシュートは………ルカワめ!!」


流川のシュートは沢北が彼の目の前で見せつけたそれと全く同じだった。

平然とやってのけた流川を、今度は沢北が見つめ返す。


「………」


先ほどの彼は倒せる自信があった。

でも、今の彼は…


(……へぇ……)


沢北がニヤリと笑う。


(やっぱ、そうでないとな。面白れえ…)


沢北の笑みは、流川が成長し、沢北が認めた証拠だった。


『自分が乗り越えるべき相手』


だと。




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