#14 成長
目を奪われた。
恐ろしく静かなシュートだった。
一瞬、凍り付いたように時が止まったかと思った。
自分を見た、沢北の自信に満ちた顔が頭に残る。
自分に見せ付けるかのようなプレイ。
沢北のシュートは流川に強烈な印象を頭に刻み付けた。
流川が沢北のシュートを忘れられないでいる中、目前でそのシュートを見た桜木はイライラを隠し切れずに声を大きくする。
「ナメやがって……あのフザケた放り投げシュートは…この天才をおちょくってるつもりか!!」
「そーでもねーぞ、桜木」
隣で桜木の発言を聞いていたセンター・河田が冷静に説明をする。
「沢北があれを日本でやったのは初めてだ」
「ぬ?」
(…む?)
河田と桜木の会話が耳に入った。
(…「日本」で…?)
確かにそう聞こえた。
流川の胸がチクリと痛む。
沢北のプレイはまたもや会場の空気を変えた。
波に乗ってきた沢北。
未だ心の引っ掛かりがなんなのか見いだせないままの流川。
それでも試合は進行していく。
心に引っかかりが残る流川のプレイ。
思うように体が動かない。
「ニホンイチ!?笑わすな!!この身の程知らずめ!」
調子の乗らない流川のプレイに桜木が文句を言う。
「……ニホンイチ?」
沢北もまた、桜木の発言に引っかかるものを感じた。
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