#14 成長


オフェンスに関しては絶対の自信があった。

誰にも負けない自信が。

だけど、どこかでブレーキがかかる。

かけたくないブレーキ。

頭の中で考えているところに桜木が自分を挑発する。


「日本一になるとかのぼせ上がってたワリには、その小坊主に手も足も出ねぇようだな」

「……………」


そんな桜木の小馬鹿にするような挑発でさえ自分を刺激する。

そこに桜木が速攻のレイアップを外すというイージーミスをする。


「あーーっ!!しまったーーっ!!」

「チッ…どあほうが」


先ほどの仕返しとばかりに流川は桜木の上からダンクを思い切り叩き込む。


『うわああああーー!!』

『8点差だぁっ!!』

『ルカワッ!!』


20点以上あった点差がこのダンクでついに1桁の8点にまで縮まる。


「ノーマークだったはずだよな……湘北なんて……」


脅威の追い上げに山王の面々は動揺を隠し切れずにいた。

しかし、流川のプレイを見て触発された人物が一人いた。


「やられたらやり返しゃいーんすよ……3倍にしてね」


流川のダンクは沢北のプライドに火をつけた。

完全に火が点いた沢北はあることを思い出し、自然と口角が上がる。


(アイツ…初めて会ったような気がしなかったのは……そうか…そういうことか……)


沢北がアメリカ遠征で見た「あの人」…きっとそうだ。


「パスくださいよ、深津さん!」


キャプテンの深津にボールを回すよう要求する。


(そうだ……アイツにあの人の「お礼」をしておかないとな……)


会場に山王コールが響き渡る。

そんな中、流川が速攻に走る。

---山王にとどめを刺す!!

山王は速攻を防ぐべく流川を追い掛ける。

しかし、沢北が手でサインを出す。


(…オレが、やります…!)


とっさのサインに深津と河田は一歩引く。


(…流川……!!)


流川がダンクに飛んだのと同時に沢北も飛ぶ。

そして、ボールのみを叩き落とす。

流川が一瞬ひるむ中、沢北の目はボールだけを追う。

そして次は沢北のカウンター。

宮城、三井、赤木を難なくかわし、

シュートを阻止しようと飛んだ桜木の腕の隙間から、ブロックのはるか上に軽々とボールを真っ直ぐに放る。

ボールは、高く、真っ直ぐ上がり、

そのまま一直線にリングに当たることなくネットをくぐる。

沢北はリングをくぐったボールを見る事無く、意味ありげに流川に視線を移す。


(どうだ、流川……)


「あっ…!あのシュート………!!」


沢北のシュートに馨は思わず身を乗り出す。


オオオオオォォォーー!!!


山王への声援が爆発する。


(どうだ、流川。今のがオレからの「お礼」だ)


沢北がアメリカで見た、彼女のプレイ。

アメリカの選手にこてんぱんにやられ、自分に少し自信をなくしていた時に見た、彼女のあのプレイ。

まさか日本で同じ顔に巡り会えるとは、思ってもみなかった。


「あのシュート…いや、偶然だよね……」


馨は信じられないような気持ちで沢北を見つめていた。


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