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#14 成長


「波乱」であった。

後半開始直後の沢北の逆転3Pシュートは観客の心を一気に山王モードにしてしまった。

そんな空気に飲まれてしまったのかわからないが、湘北はリングに嫌われ、シュートが決まらない。

決まらないどころか、リバウンドを山王に取られ、カウンター速攻を決められ続けてしまう。

わずか10分で20点以上の点差をつけられてしまった。

その事が湘北メンバーに強い強いダメージを与える結果となる。

宮城は後半早々、深津と沢北の山王の伝家の宝刀・プレスに持ち前の動きの早さを封じられてしまう。

三井は前半の徹底したディフェンスが響き、体が思うように動かない。

桜木は自分より技術のあるリバウンダーから自分の武器であるリバウンドを取ることができない。

赤木は最強のセンター河田に動きの全てを見透かされ、自信喪失。プレイに乱れが生じてしまう。

流川もまた、自分の攻めに対してこれ程ない守りをする沢北に力の差を見せつけられる。

それぞれ、精神状態はボロボロになっていた。


「負ける、のか……?」


湘北メンバーはその言葉を頭からかき消すのに必死だった。

試合開始前にあった「勝つ」という大きな気持ちは、「負けるかもしれない」という負の気持ちでザックリと大きく削られてしまっていた。

消したくても、消せなかった。

否定したいのに、何も考えられなかった。

頭の中で必死に切り替えようとしても、意識がついていけなかった。

しかし、安西監督は諦めなかった。


「諦めたらそこで試合終了ですよ…?」


この言葉で桜木が息を吹き返す。

ベンチの期待を一身に受け、リバウンドを取るべく奮闘する。

この桜木のオフェンスリバウンドで少しずつ何かが変わっていった。


「ヤマオーは俺が倒す!!」


そして宮城が司令塔としての落ち着きを取り戻す。


「絶対にもう一度、ウチに流れがくる!」


河田に気を取られすぎてプレイに集中出来ていなかった赤木が思わぬライバルの助言で吹っ切れ、己の魂を取り戻す。


「湘北は負けんぞ………負けん!!」


三井がヨロヨロになりながらも周りの助けを得て執念で3Pを決める。


「もうオレには…リングしか見えねえ」


---流れは大きく変わっていった。


次第に息を吹き返す湘北。

しかし…


「流れは変わってる…だけど……まだだ」


馨がポツリと不満げに呟く。

その原因は、彼しかいない。

まだ、息を吹き返していない、彼だ。


「何故仕掛けてこねえ。そんなにおとなしい奴じゃねえだろうによ」


未だ迷走しつづけていた。

決して攻めあぐんでいる訳ではない。

意識の奥底で何かくすぶっていた。

行き場所のないそれは、外に出ずに心の中でドロドロと渦巻いている。


「どあほうが……ぶっつぶす」



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