#2 出会い
「ハァ…ハァ…」
シュートを決めた先客は両手を膝につけて呼吸を整えている。
すぐにボールを取りに行かないという事は長い時間練習をしていたのだろうか。
もう終わりにするのか…
(もうオワリにしろ…)
流川は早く練習がしたくてウズウズしていた。
自分だってバスケがしたくてここにきたのだ。
相手の練習を見るより今はボールを操りたい。
先客のあの彼女のように。
そんな願いが通じたのか、先客は帰る素振りを見せる。
呼吸がすっかり落ち着いた彼女はボールを拾い上げている。
「よし、戻るか…」
そう呟いたのと同時に、両手でボールをパンッと鳴らして、自分が来た方と反対方向へ歩いて行った。
(…モドル?)
「戻る」とはどういう意味だろう。
「帰る」の間違いでは?
小さな疑問を持ちながら立ち上がる。
「まぁ、どうでもいいか」とすぐに頭を切り替え、ドリブルをしながらリングに向かう。
邪魔が入ったが、赤い頭のどあほうの邪魔に比べたら遥かにマシだった。
(ちょっとうまかったし…)
少しいいものを見ることができた分だけマシというものだ。
そう思った後、今度は自分も負けじと「仮想1on1」を始めた。
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