#13 プレッシャー
「……凄い…」
目の前で流川の力強いダンクを見て馨は息を飲む。
確か2年前はあんな力強いダンクはまだできなかったはず。
そして何より、沢北をフェイクなしで抜き去ったスピードは2年前とは段違いだった。
こんなにも成長していたなんて。
あんなに速く、高く飛べるなんて。
(2年、か…)
馨が少し遠くを仰ぎながらフロアを見る中、沢北が受け損なったボールを流川が受け取り、真っ直ぐゴールへと向かう。
ワンマン速攻だ。
「いけ!流川ーーー!!」
湘北サイドが一気に盛り上がる。
「ワンマン速攻!!」
ワンマン速攻は絶対的な得点チャンスであり、流川本人を含め、誰しもが得点できると思っていた。
しかし、流川がボールをリングへ放とうとした瞬間、沢北がそのボールを叩き落とした。
「ああっ!」
(なにっ!?)
しかし、沢北のプレイは審判にファウルを宣告され、沢北は先輩達の圧力に押され、渋々ベンチにつく。
沢北、試合に集中出来ず一時フロアから姿を消す。
その後、フリースローを難なく決め、流川もまたフロアから姿を消す。
両チーム、エースを一時保存。
「………」
「………」
二人の視線が一瞬交差する。
ベンチに座り、流川の頭の中は悔しさで溢れていた。
足の速さには自信があった。
そして、あのワンマン速攻は必ず決まると思っていた。
しかし沢北に知らぬ間に追い付かれボールをはじかれた。
ああいう場面で追い付かれるということなんて今まで一度もなかった。
(くそ……)
悔しさが募る。
プライドが許さなかった。
先ほど沢北を抜いたことなど頭の中から消えてしまうほど、悔しさでいっぱいになった。
「やっぱり、速い」
今のプレイを上からしっかり見ていた馨。
馨も湘北に2点入ると確信した一人だ。
「もらった」と思った瞬間、流川のすぐ後ろに追い付き、ボールを叩き落とした。
恐ろしい速さだった。
流川との1対1で見せたドライブといい、沢北の速さはホンモノだ。
馨はベンチに座っている流川に目を移す。
本人も追い付かれた事に対して腑に落ちない様子だ。
「………」
馨は静かに見守る。
速攻に走る流川は非常に速かった。
あれに追い付くのはまず難しいだろう。
でも、
沢北は追い付いた。
流川を見つめながら馨はぽつりと呟く。
「沢北さんは強いよ、楓。」
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