#13 プレッシャー
湘北の攻撃は豊玉戦で活躍したキャプテンの赤木・エース流川ではなく、三井にボールを集める。
三井もまたそれに答えるかのように3連続3Pシュートを見事に決める。
(すげーな…)
今日はよほど調子がいいと見える。
早いモーションからの3Pに流川も感心してしまう。
自分も3Pシュートは打てるものの、3本連続、しかもあれほどのクイックモーションに自信を持って打った事などない。
(伊達にMVP取って全中に出ただけのコトはある…)
大きな試合ほど燃えてしまう自分だが、三井もまた自分と同様、大きな試合ほど燃える人間なのかもしれない。
しかも彼は全国大会経験者。
そんな「度胸」を今の3Pで垣間見たように感じた。
その後、三井が執拗なディフェンスをかわし、更に赤木にパス。
赤木がリングを壊さんばかりの力強いダンクを決めた。
「ゴリラダァーーンク!!!」
湘北ベンチではここぞとばかりに騒ぎ立てる。
「…うまい、あの14番!」
フォームも綺麗な上、プレイ自体もセンスを感じる。
派手なプレイではないが、いい動きをする三井に「巧さ」を馨は感じた。
対する山王は素早く三井のチェックを更に厳しくする。
山王の当たりの厳しさは三井に対してだけではない。
赤木、流川に対してのディフェンスも厳しく、パスを出すのは難しいと判断したPG宮城がそのまま突っ込む。
「速い!!」
宮城のスピードに馨は息を飲む。
あっという間にゴール下に切り込み、シュートに飛ぶ。
「!!!」
流川が気付いた時にはその人物は既に宙にいた。
バン!!!!
刹那、ゴール下に回り込んだ沢北がブロック!!
宮城の手からボールを叩き落とした、
が。
バチコン!!!
「ぶっ!?」
沢北にブロックされたボールが同じくゴール下にいた桜木の顔面を直撃。
ボールは反動で宙に舞い、そのままゴールに吸い込まれていった。
「---!!」
「…………」
「おおーーーー!!??」
「なに、それぇ!!??」
湘北に2点が追加される。
リングにボールはくぐったが……
「あんな得点認められるんだ…初めて見た……」
信じられないが、審判が認めたのだかられっきとした得点なのだろう。
「なんだろう、このモヤモヤは…」
馨がぐるぐると考えていると
ワーーーッ!!!
一際大きな声援が会場に響く。
フロアを見た馨は一気に緊張感が高まる。
沢北と流川の1ON1。
会場の全ての視線が沢北に集中する。
馨もまた、向かい合う2人に集中する。
しばし睨み合った次の瞬間、沢北はあっさり流川を背後に置き去りにしてシュートを決めた。
僅かな時間の出来事だった。
『…………!!』
『……………』
一瞬の沈黙。
『おおおーーー!!』
『は、はえぇっ!!』
沢北の一瞬の出来事は会場の時間を止めた。
沢北はチラリと流川を見たのち、その場から立ち去る。
今のドライブは流川に見せ付けてやったのだと言わんばかりに。
流川も沢北の意図を感じ取ったように、じっと沢北を見つめている。
「速い…沢北さん、また速くなってる…」
流川をあっという間に抜き去った沢北を丸い目で見つめる。
日本一のチームのエースとはこれほどまでにすごいのか。
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