#13 プレッシャー
ブーーーッ
会場フロアに入ると同時に試合終了のブザーが鳴る。
104-49で海南の圧勝であった。
試合全体が見えるよう、席の後ろの通路、コートの真ん中辺りを陣とる。
…もちろん立ち見なのだが、逆に視界に邪魔なものは一切なく、観戦するにはいい場所だった。
『山王ーーー!!』
『待ってました!!』
『頼むぞぉ!!!』
会場内では山王に対する声援が一際大きくなる。
無名の湘北より日本一常連の山王のエールが多いのは当然と言えば当然か。
完全にアウェイな空気の中、湘北の面々はその声援に負けないくらいの大きな声を出し、気合い十分で練習に入る。
(………いた!!!)
馨の目が流川を真っ先に捕らえる。
思わず身を乗り出し、自然と顔がほころんでしまう。
(変わってない……)
身長が伸び、顔つきも大人っぽくなっているが、ちっとも変わっていない流川を見て、何故か嬉しくなる。
心配された目の腫れは嘘のように消え、本人も特に気にしている様子もない。
(ホントに効いたんだ、アイツの薬…)
これで万全の状態で試合に臨めるはず、と馨はホッとする。
早く始まらないかとワクワクし始めた、その時……
「パァーーーース!!!」
先程の「ダブルドリブル」の赤い頭の男が山王のリングに向かって走っていく。
山王の選手は訳もわからず言われるがままボールを渡してしまい、赤い頭の男はそのままボールをリングに叩きこんだ。
「…アイツ…!」
『おおーーーー!!!』
『スゲェ!!』
『反対のゴールだぞ!?』
『なんてことしやがる!』
会場は歓声とブーイングで一杯になる。
「アイサツがわりだ」
赤い髪の男はそう言って自チームの2人と一緒にグッと握りこぶしを山王に作る。
「……やるじゃん」
山王に対していきなり挑発行為とは……倒す気満々ではないか。
……面白い事をする。
そういう人間は嫌いではない。
するとすかさず山王の一人が「アイサツ」のお返しに行く。
馨はハッとして山王の9番の選手を見る。
「……あれは…沢北さん!」
あっという間にボールを受け取り、リングに飛ぶ。
「速っ!!………あ!」
感心すると同時に沢北は誰かが投げた2つのボールにダンクを妨害される。
ボールを投げた主の一人を見て、馨はニヤリと笑う。
「……やるじゃん。楓。」
やはり、彼も倒す気満々だ。
この試合、面白くなりそうだ。
.