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#2 出会い


「ちっ…」


流川はふと嫌な事を思い出して再び舌打ちする。

どこかのどあほうのせいで貴重な練習時間が潰されてしまった朝を思い出してしまった。

あの日は中々広場から帰らず、結局そのままとんぼ返りをしまうという、なんともムダな時間を過ごしてしまった。


「はぁ…」


忌々しい記憶に思わず深いため息が出る。

今日もあの日のようにそのまま帰るのは癪なので、「あの時」のように物陰からどんなヤツか見る事にした。


(どうか、どあほうじゃアリマセンヨウニ…)


朝っぱらからどあほうの顔は見たくない。

ただでさえ、自分が練習をしようとする先々で難くせつけて邪魔をする。


(イヤダイヤダ…)


そんな事を考えながら植え込みに身を潜める。

後ろ姿なのと、ニット帽とメガネのせいで顔はよく見えないが、先客は長めのショートカットの黒髪。

自分より小さい背丈。


(どあほうじゃない…)


赤い髪の「奴」ではない事がわかると、内心ホッとする。

しかしニット帽とは暑くないのかアイツは。

まだ9月だといえ、暑さが残る時期なのに…

そんな心配をよそに先客はバスケットボールを巧みに操っている。

誰かと1on1をするかのように見えるそのプレイ、視線は少し上方向に向いている。

ボールに緩急をつけ、時に鋭く切れ込む。

動きのひとつひとつが流れるようで、綺麗な動きだ。


(ほう…やるな…)


先客のプレイに同じプレイヤーとして感心する。


(……どんなヤツだ?)


よく見ようとして目を凝らした瞬間、先客はゴールから少し離れた位置からシュートする。


両手で。



(オンナ…か)


整ったシュートフォーム。

ボールは高く高く、弧を描いてリングに吸い込まれた。



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