#12 勝つために


「え?インターハイ?」


2ヶ月前、アメリカ。

日本を飛び出した馨は父と二人暮らしをしていた。

夏のある日、日本の母から電話がかかってきた。

湘北高校がインターハイ出場の切符を手に出す。入れたと、母は興奮気味に話す。


「そうよ!近いからって選んだ高校だったからどうなるか心配だったけど……メンバーに恵まれたのね!ビックリしたわ」

「インターハイ…全国か……ビックリした」


自分の事に精一杯で本人とは殆ど連絡を取っていなかったが…いつの間に…

興奮気味の母は更に興奮した声で話を続ける。


「それだけじゃないのよ!なんと!ベスト5にも選ばれたのよ!」

「っええ!?こ、高校1年なのに?ベスト5?」


思わず受話器を取り落としそうになる。

……信じられない

まだ1年生だというのに県のベスト5にまで選ばれてしまうとは……一体どんなプレイをしたのだろうか…

負けず嫌いの彼の事だ、きっと絶対に負けたくない相手でもいたのだろう。

それほどの相手、見てみたいが…ベスト5に選ばれる程に実力を身につけた楓のプレイも見てみたいと思った。


「ねぇ馨。そろそろ日本に帰ってきたら?もうそっちで十分バスケしたでしょ?それに、あなたがいなくなってから楓はますます喋らなくなっちゃって…私も寂しいわ」

「……うん」


ただでさえ口数の少ない男。

バスケに一生懸命で、バスケの事しか考えてないような彼の頭に、「家族との会話」はひとけらもないらしい。

一通り会話をしたあと、ゆっくりと受話器をおく。


「日本か…」



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