#11 勝負
馨は自室に戻り、机に伏せて目を瞑っていた。
『お前を倒す』
流川の言葉が頭を駆け巡る。
目をギュッと瞑ったあと、ゆっくりと立ち上がり、窓際へ向かい、窓を少し開ける。
夜の秋風がさぁっと部屋に入り、馨の髪を揺らす。
夏の暑さが和らいで、とても心地いい。
あの人は見抜いている。
自分のプレイがベストでないことに。
その原因は、私自身の心に引っ掛かりがあるということも……
心臓をギュッと掴まれるような感覚。
言ってしまった方がいいに決まってるのに、何故か言えなかった。
そんな自分も嫌になる。
馨は泣きたくなるような感覚を押さえていた。
心の引っ掛かりをなくさなければ、きっと勝てない。
山王戦を見て心底凄い人だと思った。
背筋がゾクリとした。
本当にこの人相手に今まで1on1をしていたのか、私は…
そんな相手が自分を倒すと言った。
「倒す」と言ったということは「倒すべき相手」だということだ。
あれほどのプレイをする相手から、そう思ってくれるのは誇っていいのだろうか。
でも……果たしてまともに相手して、勝負になるだろうか。
メガネを外して机に置き、馨は山王戦を一つ一つ思い出す。
To be contines
09.10.15