#11 勝負
(あれ……?)
隣の部屋でドアの音が聞こえた後、足元に本が転がっているのに気付く。
馨が先程まで読んでいた本。
拾い上げて中を見てみると英文がびっしり書いてある。
英語の本だ。
ところどころ単語訳が書き込まれているが……
「……読めん」
ぎっちりと書かれた連続する英単語に軽く目眩がする。
(こんなの読めるのか、アイツは…)
流石、アメリカ帰りだと関心する。
自分など、英語の初歩もギリギリだというのに。
すぐに返しに向かおうと思ったが流石に行きづらい。
流川は本を机の上にそっと置き、部屋の照明を落とし、再びベッドに横になった。
やはり、確信に触れようとすると馨は黙ってしまう。
2年前の衝撃はそれほど大きく、深く残っているのだろう。
だけど、それだけではないような気がする。
2年前のことに付け加えて、アメリカでも何か馨を揺るがす事があったように思える。
いつになったら話してくれるのだろう。
早く、その苦しみから解放させたいのに。
こんな時、気の効いた事が言えない自分に少し嫌気が差してくる…。
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