#11 勝負
馨は視線を外さない。
「日本一の高校生…?」
「あぁ。俺は、それになる。…必ず」
日本一の高校生とはなんだろう。
考えてみると実に奥が深い言葉だ。
全国大会でMVPをとれば、それも「日本一の高校生」であることには間違いない。
だけど、その言葉の真の意味はもっと別のところにあるのかもしれない。
そう、それは、きっと…
『チームを日本一に導くプレイヤー』
それこそが「日本一の高校生」なのかもしれない。
(…そうか)
日本一という言葉に、どうも引っかかりと感じると思っていた。
…そうだ、プレイに何か変化があると思ったのはこれだったのか。
プレイ中の気迫は「強くなりたい」という漠然とした目標ではなく、「日本一の高校生」というはっきりとした目標が出来たから…
それであんな目を……
馨は流川の変化の経緯を悟った。
「日本一…か」
この前、桜木にも言った、「日本一」
そして、それに向かう目の前の人物。
「…なれるよ、楓なら」
不思議な確証だった。
この人はきっと実現できるはず。
この人の精神は、一度決めたらそれに真っ直ぐ向かい、突き進む、「強い」人。
こんなに「強い」人は知らない。
その鋼のような強い思いは決して揺らぐことはないだろう。
「楓なら、できる」
「…………」
顔には出さないが、流川は嬉しかった。
馨が流川を「強い」と思うように、流川も馨を「強い」と思っていたから。
プレイだけではなく、その意志の強さでも。
そんな「強い」と思う人からはっきりと「できる」と言われたのは不思議と自信がついて……とても嬉しかった。
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