#10 基礎練習


この日を境に桜木は馨とマンツーマンで基礎練習を行った。

念入りにストレッチをした後、ドリブル、パス、シュートの練習。

地味な練習に桜木は時々「耐えられない」とばかりにイライラしたが、彼はぐっと我慢した。

自分はもっと上手くなりたいと思ったから……。

決して表には出さなかったが、「あの男に追い付きたい」という思いが根っこにあった。


「…負けねーぞ…」


他の部員もシュート練習をはじめ、体力作りの練習が主になっていた。

特にシュート練習は皆気合いが入っていた。

晴子は毎日練習前に前日のシュート成功率をまとめたものを見せる。

それは部員全員の成功率が全ておおっぴらに公表される。

部員たちはそれに一喜一憂した。

特に派手なプレイがない練習にギャラリーの数も減り、多少のギャラリーが黄色い声援をあげるものの、体育館はいつもの落ちつきを取り戻していた。

そして落ち着きを取り戻したのは体育館だけではなかった。

連日1年7組に集まっていた女子も桜木軍団の妨害にあうわ、馨のだんまりにあうわで、次第に集まらなくなっていた。

まぁ、集まらなくなっただけで馨が近くを通れば女子に何しらの反応をされるのは変わらなかったのだが…

転校初日の騒動を思うとはるかにマシだった。


「ハイハイ、流川の姉ちゃん見るなら1人50円ね」

「ほらほら、押さないでね~」

「てめーら!!見せもんじゃねーって言ってるだろうが!!おいそこ!商売をするんじゃねー!」

「いいじゃねーか、花道。稼ぎ頭なんだぜ、馨ちゃんは」

「失礼だぞ!大楠!」


桜木が大楠に掴みかかるのを阻止しながら水戸は馨を気遣うように苦笑する。


「わ、悪気はないからな、馨ちゃん」

「わかってるよ」


目の前で通せんぼしている高宮達を、机に肘をつきながら眺める馨はクスリと笑っていた。






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09.10.03
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