#2 出会い

ふと思い出す子供の頃。

一緒にバスケを始め、毎日一緒にクタクタになるまでプレイし、お互いを高め合った。

自分と同じ顔。

双子の姉。

身長と性別は違えどバスケの相手には申し分なかった。

…しかし、彼女とは中学2年の夏から会っていない。


………


………


…夢でも見ていたのだろうか。

気がつくとカーテンの隙間から朝の光が漏れ、鳥のさえずりが聞こえていた。

未だに夢の狭間にいるのか、頭がぼんやりする。


(………チッ)


流川は不機嫌そうに頭をガシガシとかきながらベッドから起き上がり、もそもそとジャージに着替える。

毎朝の日課としている練習をしている場所に向かう為にだ。

寝る事が好きで「起きる」という作業がとてつもなく苦手なのだが、バスケの事となると早朝でもこうして起きる事ができるから不思議だと我ながら思う。

今日も晴れて軽く体を動かすには丁度よさそうな気温だ。

お気に入りの洋楽を聴きながら、猛スピードで愛用のマウンテンバイクをこぐ。

早朝の人気のない街中をスイスイと縫うように駆け抜けていく。

バイクの速さを増すに従い、呼吸は早くなり、汗がじんわり出てくる。

速く漕ぐのはウォーミングアップもできるから。

一石二鳥だ。

バスケをする事で頭がいっぱいになっているので、今朝思い出した事はすっかり頭から消えていた。



ゼーゼーと息を上がる頃に広場に到着する。

イヤホンを耳から外し、使い慣れたボールを鞄から取り出す。

ブランコしかない公園…いや、広場と言った方が相応しい。

ポツンとあるバスケットのリング。

思い立った頃からここで練習をしている、お気に入りの場所。

大した遊具もないので人が集まりにくい。

黙々と練習したい自分にピッタリの場所。

この時間は誰もここを使わない。



はずなのに。



ダム…


ザシュ…



広場のリングを既に誰かが使っている気配がする。


(くそ、誰かいるのか…)


流川は心の中で舌打ちをする。

いつもは誰も使っていないのに今朝は先客がいるようだ。

誰だ、使っているのは…

流川は自分の存在が相手に気づかれないように静かにリングのある方へと向かう。



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