#10 基礎練習
夜……
辺りがすっかり暗くなった頃、バスケ部の練習が終了した。
最初は流川とそっくりな顔に戸惑っていた桜木も、すっかり馨に慣れたようだ。
「馨さん、ありがとうございました!」
「いや、花道も頑張ったね。家でもストレッチ忘れないでね。そして早く寝ること!」
「ハイ!では、お先に!」
馨も張り切る桜木に満足げだ。
「……おい」
流川が後ろから馨に話しかける。
「ナゼ、どあほうの相手?」
「あぁ、安西先生と話してて、私が見てた方がいいんじゃないかって」
「……?」
「花道は単純で面白いね。誉めればすぐ調子に乗るの」
馨が意地悪くククッと笑う。
「……フン、単純だからな」
「最初は基礎練習嫌がってたけど、なんか吹っ切れたみたい。吸収も早いし…あれはきっといいセンターになるよ」
ふと、扉の外にいる桜木を見る。
赤い顔をして晴子と何やら話をしている。
流川もつられて馨と同じ方を見る。
「まだケガの影響もあるし、まだまだ経験不足だけど、すごいセンターになるよ、きっと」
「…………」
馨の分析と流川の考えは一緒だった。
流川本人は認めてはいなかったが、自分の知らないところで、そう思っていた。
驚異のジャンプ力、底知れぬスタミナ、たった4ヶ月で身につけたリバウンド力…
もっと技術を身につけ、もっと試合経験を積んだら、もしかしたら…
「今日はもう帰ろっか。何か今日は疲れちゃったよ。転校初日だったし」
「…俺も、帰る」
馨は一日中女子に囲まれ、精神的に疲れていて、流川は朝から寝不足の上、授業中寝ていなかったので眠くて仕方がない。
「帰りも寝ないでよ!」
「自信ない」
「自信満々に言うなよ…」
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