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#10 基礎練習


アメリカにいた2年、基礎練習が主な練習だったと馨は言った。

中学時代からかなり上手かったと彩子が話していたのを桜木は思い出す。

彼女のボールさばきは基礎練習の賜物だと安西が話していたのを思い出す。


『盗めるだけ盗みなさい』


もう一つの言葉を思い出す。


「…ちゃんと基礎練習やったら、上手くなるんですか?」


桜木の顔は真剣だ。

そんな桜木の顔を見て、馨はニヤリと笑う。


「なるね」


ほんの少しだけバスケから離れただけで、バスケのプレイを体が忘れ、早くそれを取り戻したいのにケガの影響で思うように練習できない。

そう、今の自分には基礎練習しかない…。

基礎練習しか出来なくても上手くなると、馨はハッキリ言った。

実際馨は2年も基礎をみっちりやってた。

その賜物が昨日のプレイなのだ。

女ながらに宮城に食らい付き、パスやシュートにも全く迷いがないプレイ。

きっと自分にも成果はあるはず…

桜木は両の拳をギュッと握り締める。


「馨さん」

「なに?」


そしてお互い顔を見てニヤリと笑う。


「やりましょう!!」

「そうこなくっちゃ!」


桜木は新しく道が開けたような感覚に、気持ちが軽くなったように思えた。

それはかつて安西にシュート2万本をするよう告げられ練習を始めた時の感覚と似ていた。


「やればできる」と。


体育館で椅子に座って練習風景を見ていた安西が二人を見て優しくにっこり微笑む。

桜木と馨のやりとりを遠くから眺めていたのだ。




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