#10 基礎練習
「花道、その凄まじい運動量は一つの才能だよ」
「才能…っすか?」
「そこに技術……そう、楓みたいなオフェンス力があったら、どう思う?」
「フン!あんな程度のこと、この天才にだってできる!」
「よくいうよ」
クスリと笑って壁にもたれかかる。
「面白いと思うんだけどなぁ…。技術が加われば山王の河田選手みたいに最強のセンターになるのに」
腕を組んでまたニヤリと笑う。
「そうすれば、日本一のセンターになれるんだよ、花道は」
「日本一…」
桜木の頭の中で「日本一」という言葉が駆け巡った。
大嫌いなあの男も試合中口にしていた言葉。
『日本一』
「その上で、基礎が満足にできないようじゃ……楓には到底追い付けないね」
「!!!!!!」
桜木の体に電流が走ったような衝撃が襲う。
以前にも、似たような事を言われた。
『彼の3倍練習する。そうしないと…高校生のうちには到底彼に追い付けないよ』
桜木はその言葉を改めてかみ締める。
「…………」
「さて、続き始めようか」
桜木の意思を感じ取り、寄りかかっていた体を壁から離し桜木の一歩前に出る。
「……はい……」
桜木は言われるがままに基礎練習を再開した。
練習の間、一言も喋らずに、ただ黙々と。
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