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#10 基礎練習


(またキソか……)


桜木は体育館の端っこで今日もドリブルの基礎を行っている。

バスケを始めて約半年、ケガでバスケから離れていた桜木には基礎練習が義務づけられていた。

基礎が大事なのはわかっている。

そして、たった1ヶ月のブランクで思うように体がついていかないのも実感しているし、試合に参加できる程回復していないことも…。


(わかっているが、1人だけキソをやっているというのは……!!!)


根が目立ちたがり屋な上、晴子がマネージャーに加わった今、自分のカッコいい姿を見せたくてしょうがないのだ。

おまけに隣で基礎練習を見守るのは……


「こらぁ!!雑念!!余計な事考えない!」


色々考えている桜木を見破り、馨は後頭部にチョップする。


「ぐ………」


事の起こりは今日の練習開始前に遡る。

練習を始めようとした直後、安西から各々の指示が入った。


「赤木さん」

「あ、ハイ!」


桜木の基礎練習をチェックする役目を任されていた晴子は、練習するために必要なチェックボードとストップウォッチを用意しているところだった。

そこに安西がチョイチョイと呼び止める。


「今日からみんなのシュート確率のチェックをしてくれませんか?」

「え?確率、ですか?」


毎日のシュート率、さらに打った位置のシュート率まで細かくチェックして欲しいと安西は晴子につげた。


「どこの位置からのシュートが得意で、どこが苦手か。数字に出してはっきり皆に出してほしいんです。はっきりわかれば、皆の意欲も沸くでしょう。大変な作業ですがお願いできますか?」

「え…それは構いませんけど…桜木くんは…」


晴子は皆とストレッチをしている桜木を心配気に見つめる。

桜木は晴子といても時々他の部員に悪態をついたり、練習に乗り込もうとするので目が離せない。

そんな桜木を放っておくことはできなかった。


「ああ、桜木君は馨さんにお任せすることにします」

「ええっ!!」


そんなわけで、今桜木の隣では馨が腕を組んで半ば監視するように仁王立ちしている。

ぶつぶつ心の中で文句を言いながらも桜木の脳裏には安西の言葉が脳裏に焼きついていた。

『馨さんのプレイは基礎がしっかりしている賜物ですよ。桜木君、彼女から基礎をしっかり吸収してください』


「でもオレはハルコさんの方がよかったのに……あのオヤジめ……」


それでも晴子との練習がなくなってしまったことを悔やみきれない桜木は思わず本音を声に出してしまう。


「なに、私じゃ不満なの?」

「あ…!!いや…!…」


桜木の文句に気付いた馨の目が光る。


「真面目にやらないと、言うよ?…あのセリフ……この顔で……」

「ぬ??」


馨は桜木をギロッと睨み付け、思いっきり低い声で桜木が大嫌いな男のあのセリフを言ってやった。


「…この、どあほうが…」

「ぐあーーー!!」


桜木は頭を抱えてガバッと立ち上がる。

「その」顔で言われると拍車がかかる。

あの男の事でイライラしたくない桜木は真面目に基礎練習を再開したのであった。



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