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#1 プロローグ

夕方、二人は男と別れた。

あのあと、二人は男にバスケットを教えてもらった。

夢中になって、気付くと辺りはオレンジ色に染まっていた。

走ってきた道を今度は手を繋いで歩いて家路につく。


「楽しかったね、バスケット」

「ん……」

「ねぇ、二人でずっと一緒にバスケットしようよ!」

「ん……」

「あの人、高校でバスケット教えてるんだってね。あっ!二人でその高校行ったら面白いかも!」


意地悪そうにククッと笑う。


「……」


(俺は行かないカモ……なんとなく……)


子供の何気ない予感は当たったりするから恐ろしい。

弟の楓の口数が少ないのはいつものこと。

逆に姉の馨はクルクルとよく喋る。

正反対な性格だったが、お互いの事はよく理解していて、互いに足りない部分を補い合うかのように過ごしていた。

そして、二人はどちらが姉とか弟とか本人たちは気にしてない。

たまたま先に生まれた方なんだから、そんな少しの差で上か下か決まるなんてくだらない。

子供ながらにそう思っていた。

そしてこの日の二人の約束通り、バスケを本格的に始めた。

両親に頼んでバスケットボールを1つ、買って貰った。

親は、二人が折角興味を持ったのだから、と協力的で、深夜にテレビ放送していたNBAの番組を録画して見せてくれた。

プロのバスケット選手はこんなに凄いものなんだ、と。

テレビの中では、外国の選手が高いリングにいとも簡単に直接ボールをたたき込む。

向こうのゴールは低くできてるんじゃないのか?と思うほどだ。

シュートが決まるたび、客席はお祭りのように盛り上がる。

二人は夢中で眺めた。

そして二人は毎日、あの広場でバスケットをした。

どうしてもボールはリングには届かなかったけど…

とても楽しかった。

小学校に入ると地元のミニバスのチームに加入し、練習に参加した。

豪快なダング憧れながら……

心地よいボールさばきに憧れながら……

二人はめきめきと実力を身につけていった。

そして、練習後の1on1も欠かさなかった。

毎日毎日、体育館と、バスケと出会ったあの公園で。

飽きることなく続いていた。




中学2年の夏までは。




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