#9 イライラ


放課後の体育館

バスケ部の練習を覗きにきている女子生徒の数はいつも以上に多かった。

扉にはワクワクした顔の女子生徒がヒソヒソと話ながら練習開始を待っていた。


「なんだ、今日はいつも以上にギャラリーが多いんじゃねぇのか?」

「あぁ、原因はあれじゃないすか、三井サン」


宮城の視線の先には、本日付けで湘北高校にやってきた馨の姿。

体育館の隅で軽くストレッチをしている。

昨日の安西の指示通り馨はバスケ部の練習に顔を出していた。

そう、女子の目的はもちろん流川と、流川にそっくりの姉、馨だ。

女子達の目的を大体把握して、三井は眉間にしわを寄せる。


「ったく、そんなに流川がいいのかよ」

「あぁ、まったくだぜ!」

「お、花道。」


桜木がモップをかけながら、三井と宮城の元へやってきた。


「聞いたぜ、花道のクラスにきたんだってな、あの子」

「……マジか!!」

「ああ。マジだ。」


桜木は片手でモップを持ち、チラリと馨を見る。

若干不機嫌そうな馨が見える。

屋上に連れ出してから一旦機嫌は直ったものの、教室に戻ると再びムスッとした顔に戻っていた。

それからずっとあの調子だ。

桜木はそんな馨を見つめている。


「…………」



ドゴッッ!!!!



突然、桜木の後頭部にバスケットボールが思いっきりぶつかった。


「さぼんじゃねー、どあほう」

「ルーカーワァ~…キサマァ~…」


桜木の目に怒りの炎がともる。


「今日はてめぇのせいで朝からイライラしっぱなしなんだ!!」

「知るかよ」


自転車で引かれそうになるわ、1日中隣で「ルカワ、ルカワ」と聞かされ…

心のどこかで馨を気遣っていた桜木の精神は色んな方面から攻撃を受けていた。

そんな桜木は爆発寸前だった。



バシィ!!!!



「コラァッ!!なにやってんの!」


桜木が流川にズンズン進もうとした時、彩子のハリセンがまたしても後頭部に炸裂した。


「ぐっ!、アヤコさん…」

「アヤちゃん!!」


赤木が引退した湘北バスケ部。

問題児軍団に鉄槌を落とすのは専ら彩子の役目になっていた。


「ほらっ!桜木花道!モタモタしないで早くモップがけする!」

「そーだ!アヤちゃんの言うとおり!」

「…くそっ!覚えてろ、ルカワめ…」


桜木はブツブツ言いながらモップがけを再開した。


「やれやれ…」



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