#8 転校生


「くそー、ルカワめ。キケンな事しやがって」


朝の一件のせいで桜木はイライラしていた。

教室の机で険しい顔をしていた。


「流川と言えば、一緒にきてなかったのか?例の姉貴」


桜木の隣の机に座っている水戸が尋ねる。


「ぬ…どうだったかな…突然の事でちっとも覚えてねぇ…」

「なんだ、つまんねぇな。……でも、どこのクラスにくるかな」

「さーな!」


桜木の気持ちは少し複雑だった。

彼は女性に弱い。

馨の顔はあの大嫌いな流川楓を彷彿とさせるが、彼女は女性。

普段の桜木は女性には敬語を使うタチだが、馨に敬語を使うとなると、流川に敬語を使っているような錯覚になり、何だかムズムズする。

…接し方がよくわからなかった。


「おーい、みんな席につけー」


始業ベルが鳴り、担任がやってきた。

教室の生徒はぞろぞろと席につく。


「今日は突然だが、転校生を紹介する」

「ぬっ!!」

「転校生!!まさか!」


桜木と水戸がお互いの視線を合わせる。

二人の考えている事が一致し、視線が交差する。


「入ってきなさい」



ガラ……



担任に言われてゆっくりとドアを開けて入ってきたのは、心なしか緊張気味の馨だった。


「「「!!!!!」」」


教室の空気が一気に固まったのがわかった。

理由は説明するまでもない。


「あ~、みんな見て大体察しはつくとは思うが………流川馨くんだ」

(……流川!)

(「流川」だって?)

(……やっぱり!)

(……そっくり…)


そんな思いが教室内に広がる。


「な……」

「ウチのクラスにきやがった……」


桜木と水戸も驚きを隠せないでいた。

皆の視線が馨に集中する。

一部の女子は見とれている。


「名前でわかると思うが、10組の流川とは双子の姉弟だ。馨くんは事情があってアメリカにいたんだが…」


担任が事の顛末を説明するが、水戸は開いた口が塞がらずに唖然としている。


「す、すげぇ、ホントに流川そっくりだ…」

「フクザツだ…」


桜木も別の意味の心境でで担任の説明など頭に入っていなかった。


「じゃあキミの席は桜木の隣だ。1度会ってるそうだからその方がいいだろう」

「なに…?」


隣を見ると席が一つ空いている。

先ほど水戸が座っていた机だ。


「いつのまに……」

「あんなところに空席、あったかな…」


馨は桜木と同じクラスになった。



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