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#8 転校生


今日は秋晴れ。

日差しはまだ強いが、風に爽やかさを感じる事ができる。

流川のまっすぐな黒髪が風と自転車から受ける風で後ろに揺れる。

馨はその流れる黒髪をじっと見つめていた。


(やっぱコイツの髪、キレーだな…)


久々に間近で見る黒髪。

目の前にすると本当にサラサラだ。

つい、凝視してしまう。


(なんでこんなサラサラなの?同じシャンプー使ってるのに……密かにトリートメント使ってるとか?…いや、楓に限ってそれはないか)


揺れるたびにほのかにシャンプーの香りがする。

…そして風もないのにユラユラ揺れる髪。


(……………アレ?)

「zzzz……」

「あっ!コラァ!!寝るな!!!」

「………おぉ」


頭をスパーンと平手で引っ張たいて叩き起こす。

赤信号で停車しているのに髪が揺れると思ったら……

流川は船を漕いでいた。

今寝ているという事は少し前から寝ていたのか…

赤信号で止まれるなんて天性の才能だ……


「ったく、全然進歩してないんだから…」


困りながらもニコリと微笑む。


2年前と全く同じだ。

大きな肩と背中、風を受ける漆黒の髪を眺めながら乗る自転車、その景色。

自転車のステップに乗ると目線が一段上がるので見える景色が随分と違う。

そして、この場所から受ける風は何とも言えず、とても気持ちいい。

……格別だ。

久しぶりの感覚。


(やっぱり、気持ちいいなぁ…)


再び動き出した自転車。

爽やかな風を顔に受け、気持ちよくなって目を閉じる。


(ここに帰ってきたんだな……)


この場所は大好きだ。

私の、お気に入りの場所。



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