#8 転校生
「いってきます!」
「…っす」
今朝は公園での朝練をせずに学校へ向かう。
馨は一足早く職員室に行かねばならないので、少し早めに登校する。
「ほら、乗れ」
流川は玄関脇に停めてある赤い通学用自転車にまたがり、馨に後ろに乗るよう促す。
「うわっ!いいの?」
「走って行くつもりなら止めねーけど」
「あ~!乗る!」
…元々乗せる気でいたのだから乗れと言ったのに…
「素直に乗ればいいのに」と流川は思う。
馨はいそいそと後輪のステップに足を乗せ立ち上がり、流川の肩に手を置く。
「ちょっと待った!!」
流川が自転車を漕ぎ出そうとした瞬間、馨が大きな声で何かを思い出し、後ろから恐る恐る尋ねる。
「…寝ないでよね……」
「…………………おう」
「なんだっ!その間はっ!」
居眠り運転常習犯・流川楓の朝の運転は危険だ。
被害にあった人数は中学の頃から数えて何人だろう。
故に、彼の後部座席も大変危険なのだ。
中学時代、何度彼の後頭部を叩いて起こしたことか……
「気にすんな。行くぞ」
「ちょっ!!本当に大丈夫!?」
「…………多分」
「えぇっ!?」
馨の不安をよそに、気にせずペダルを漕ぎ始める。
思い切り踏み込んで、初速から飛ばしていく。
.