#7 それぞれの夜
更に別の場所…
「本当に流川くんにそっくりだったわね、馨さん」
晴子は筋トレ中の兄の部屋にいる。
赤木は引退して受験生になったが、勉強の合間に筋トレをしている。
深沢体育大学への進学はなくなったものの、大学でもバスケを続けたい。
そのためには今が勝負とばかりに、勉強の気分転換を兼ねて毎日行っている。
「ん?…ああ。一卵性の双子だからな。」
ダンベルの手を休めないまま、赤木が答える。
「一卵性?」
「なんだ、一卵性双生児も知らんのか」
「………」
晴子はイスの上で黙ってしまった。
赤木は少し呆れた顔でふうっと息を吐き、晴子に説明を始めた。
「一卵性双生児というのはだな、一つの卵子から生まれた双子なんだ。
だから遺伝子情報も同じということになるから性別も同じだし、顔もほぼ一緒だ」
「…あれ?流川くんのとこは?」
「ああ、極めて稀に異性の一卵性双生児も産まれるそうだ。性別が違うから遺伝子情報は完全に一致するものじゃないがな。」
赤木の言う通り、一卵性双生児というものは一つの卵子から二人の子供になるので、遺伝子情報が同じゆえ性格や体格の一致は当然の事、性別も同じなのが通例である。
しかし、卵子の変化や親の遺伝子によって、極めて稀に異性の一卵性双生児が産まれる事例がある。
この場合、一卵性だが性別が違うため、遺伝子情報が完全には一致しない。
「う~ん、難しい…」
「芸能人とかでもいるだろう。考えている事が同じだったり、喋るタイミングが一緒だったり…それも遺伝子情報が同じゆえ、なんだろうな
「…うん」
「流川のところは性別も違うし体格も違う。性格も違うようだが…それは遺伝子情報がわずかに違うからだ」
「…なるほどね」
晴子は腕組みしながら、う~んと唸りながら赤木の説明を理解しようとする。
「異性の一卵性双生児は本当に珍しいんだぞ。そういう方面で有名になってもおかしくないレベルだ」
「へぇ~、そうなんだ…」
「珍しい双子」と言うのは理解できたようだ。
「全く……お前はちゃんと勉強する事だな」
ダンベルの動きを止めてニヤリと笑う。
「な、なんでいきなりそうなるのよう!!」
晴子は赤くなって反論する。
「少し調べればわかる事だ。気になったら自分で調べる。勉強の基本だぞ。流川の事ばっかり考えてないでな」
「ちょっ……!!もう!お兄ちゃんてば!何言ってるのよ!」
晴子はますます赤くなる。
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