#4 2年間

リングに直接ボールを叩き込む、跳躍力。

どんな相手も置き去りにする、脚力。

ボールを巧みに操り得点に繋げる、上手さ。

高さと速さと強さ…。

2年見ない間に随分と成長した。

ただ強さのみを求めていた2年前とは何かが違う。

そのプレイに強い「意志」が感じられる。

まるで芯を一本通したかのような…。

馨は真剣な眼差しで流川のプレイを見入っていた。


(すごい……)


同じプレイヤーとして憧れる。

でも少し切なくなる。


(やっぱり、羨ましいな…)


自分もあれくらいの身長があったら…リングに手が届くかもしれない。

もっともっと高く跳べるかもしれない。

もし、自分がーーー


「いやぁ、遅くなってすみません」


安西がゆっくりやってきた。

馨は急に意識を引っ張られ、ハッとする。


「安西先生!」

「あ、そのままでいいですよ」


彩子がすかさず反応するが、安西は練習を中断させずに体育館に入る。

馨は目線だけで軽く周りを見る。

色んな思いを巡らせていた自分の姿を誰かに見られていないか…

今、馨を見ている人物がいないので少しホッとする。


「皆さん、頑張ってますね。あ、馨さん、きましたね」


安西が馨に気付いて歩み寄る。


「あ、安西先生…今日は見学を許可して頂いてありがとうございます!」


馨は安西に深々とお辞儀する。


「いや、いいんですよ。いい機会ですから。ところでどうですか?彼らは」


安西は試合に視線を移し、ゆっくりと問い掛ける。

目の前では宮城が低いドリブルでディフェンスの脇を抜け、三井のマークから一瞬外れた流川にパスを送る。


「あ!またルカワにパスを!!」


桜木の声など聞こえない流川に三井が再びマークにつく。


「いいチームです。本当に」


試合を見つめる馨の視線は真っ直ぐだ。

流川はボールを両手で高く持ち、三井のディフェンスの隙をつこうとしている。

ボールの位置を下に変え、ピクリと小さくフェイクを入れ三井を抜き去る。

そしてそのままの勢いでゴール下に走りこみ、高く跳躍し再びボール思い切り叩き込む。


「無限の可能性があるような…そんなチームですね。まだ、先が見えないような…そんな感じです」


馨が遠くを見るように呟く。


「コラァ!ミッチー!ルカワなんぞピシャッと止めんかぁ!ピシャッとぉ!」

「うるせぇ!!てめぇは黙ってキソやってろ!」


お互いを指差しあいながら、ギャーギャーと文句を言っている。

そんな桜木と三井を見て馨はクスリと笑う。


「面白いチームです、本当に」

「いいチームですよ、本当に」


安西も柔らかい表情で返した。


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