#4 2年間

もう一人の「流川」が現れ、ストップしていた試合形式の練習が再開された。

湘北メンバーも意識を完全に練習に切り替える。

一人の訪問者にいつまでも驚いてばかりもいられない。

…驚きは大きいが……

馨は彩子、晴子、基礎練習を再開した桜木、そして体育館に入ってきた赤木と木暮と共に練習試合を見ている。


「くそ…今日は調子がいいから試合に参加できるのに、なんでこんなところでドリブルなんてしなきゃなんねーんだ…」


背中に負担はかけたくないが、やはり試合には出たい桜木。

頭ではわかっていても、感情がついていかない。


「さぁ!桜木くん!あと3分よ!ガンバって!」


晴子はストップウォッチを持って桜木の隣で見守っている。


「ハ、ハルコさん!基礎練習の鬼と言われたこの桜木!こんなの、どーってことないっすよ!」

「ナニよ、それ…」


苦笑いする彩子を尻目に桜木の高笑いが体育館に響く。


(…どあほう…)


流川はやれやれとため息をついた。


「桜木花道はなぜ基礎練習を?」


桜木の向こう側にいる晴子の顔をひょいと見つめ、話かける。

流川そっくりの顔で突然話かけられ、更には見つめられて思わず晴子の顔が赤くなる。


「え!そ、それはねぇ…桜木くんはまだ背中のケガがが完治してないから…… それにバスケをはじめたばっかりだから、基礎練習を怠ってはいけないって…」

「………ふーん…」


もごもごと話す晴子を見て馨は急に真面目な顔になる。

真剣な顔つきになるとますますそっくりだ。

そっくりだが、女性らしさのある顔立ちだ。


「????なにか??」


真顔で見つめられると流石に照れる晴子。

間にいる桜木の心境は微妙だ。


「…あ、失礼。なるほど、背中…。あの時突っ込んだ時だね…」


あごに手をあて、何やら考えている。


「なぁに、アイアンボディ桜木、完全復活は近いですよ!」


ニヤリと自信満々の顔をしながら、片膝をついてボールをつく様は滑稽だ。


「へぇ、自信満々じゃない。期待していい?」


馨が同じく自信ありげな顔で返す。

やはり桜木の心境は微妙だ。


(う、言ってる事は嬉しいが…あの顔で言われると…ふ、複雑…)


ここで木暮が疑問に思っていた事を馨に問う。


「そうだ、山王戦は見てたのかい?」


馨は山王戦の事を知っているようなので、体を乗り出して聞く。


「実は見たんですよ。生で」

「それは光栄だな。その時顔を出してくれればよかったのに。」

「いやぁ、なんか出せなくって…。なんか感動しすぎちゃって…」


ちょっと恥ずかしそうに下を見る馨。


その瞬間ーーー


ドカァァァッ!!!!


流川の力強いワンハンドダンクが炸裂した。

すかさず彩子が檄を入れる。


「いいぞぉ!流川!!」

「流川くん!!」


目がハートマークになっている晴子を見て、桜木は半分涙目になる。


「ハ、ハルコさん……くそぅ…ルカワめ…かっこつけやがって…」

「…すごいな、ダンク…」 


皆が様々な形で興奮する中、馨は穏やかな顔で流川を見ていた。


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