#23 Reset me
身支度を終えた馨が「お待たせ」と水戸の横から出てきた瞬間、桜木がその脇をくぐり抜け、勢いよく飛び出し廊下を走り抜けていった。
「ぬおおおおーーー!!!」
器用に人の間をすり抜け、桜木の姿は一瞬のうちに廊下の奥へと消えていった。
「なんだ花道のやつ、やけに張り切ってんな」
流川の思いもよらない登場が桜木の闘志に火をつけたというのは明らかだったが、相変わらず判りやすい奴だと水戸は微笑する。
それと同時に先程感じた流川への親近感の理由も自ずと見えてきた。
(なるほど、花道と似てんだな…)
火と水の様に相反する二人だが、実は素直でちょっとつつけば解りやすい反応をする。
意地っ張りで、どこか突っ張っていて…素直じゃない。
そういうところが一緒なんだな、と納得する。
「ほら、ウチらも早く行こ」
「ああ」
そう言って歩き出す馨と流川を、水戸は思い立ったように呼び止める。
「あのさ…、後で練習見に行くよ」
「ホント?…でもどうしたの?改まって。いつも言われなくても皆で見に来てるじゃん」
「そうだっけ?」
「そうだよ、また花道のこと冷やかしにおいでよ」
「試合やってた方が冷やかし甲斐もあるんだけどな。どうせ花道は基礎練だろ?」
「そうだね、まだ無理はできないし、何より基礎は大事だからね」
振り返って水戸と話をしている馨を、流川は隣で黙って見つめている。
それは馨の言葉に同意をしているかのように見えた。
「今日も馨ちゃんが花道のトコ見るんだろ?」
「当然!安西先生直々のお願いだからね!」
「厳しく頼むぜ花道のヤツ、すぐ横道に反れるからな」
「ご安心を!今日は彩子先輩から私専用のハリセン貰う事になってるから!」
((いつの間にそんなモノを…))
水戸と流川の心の声がシンクロする。
余計なモノを作らなくていいのに…と流川は更に思う。
「皆の冷やかしがあった方が花道も燃えるみたいだからさ、見に来てよ」
「ははっ、そうだな」
「私も、頑張るからさ」
「ん?ああ」
一瞬、馨の表情が真顔になる。
今は普段通りにこやかに笑っているが、ほんの僅かの変化を、水戸は見逃さなかった。
「行くぞ」
隣で黙っていた流川が会話の合間を見計らって声をかける。
「じゃあ、後でね!」
ヒラヒラと手を降る馨に合わせて水戸も手を振り返す。
顔には出さなかったが、心はスッキリしなかった。
「お~い洋平、花道見に行こうぜ~」
流川と馨の姿が人混みに消えて行くのを見届けた位のところで、後ろから高宮達の声がかかった。
水戸は自分のモヤモヤした気持ちを見透かされないよう、ニヤッと笑い、振り替える。
「お前ら、やっと来たのか。今日も花道のヤツ基礎練みたいだぜ。イライラしてまたひと暴れするかもな」
「おお!それは期待大!!それこそ冷やかし甲斐があるってもんよ!」
「馨ちゃん、アネゴからハリセン貰うらしいぜ」
「マジか!じゃあ、更に面白くなりそうな予感!!早く行こうぜ!!」
ウキウキと歩き出す面々の後ろを水戸はついていく。
その表情は高宮達とは違って少し曇っていた。
(なんだったんだろうな、あの表情…)
一瞬だけ見せた馨の表情の変化…見間違いか、はたまた自分が気にしすぎているだけなのか。
ただの思い違いだといいんだけど…
学生服のポケットに手を突っ込みながら体育館へと向かった。
.
「ぬおおおおーーー!!!」
器用に人の間をすり抜け、桜木の姿は一瞬のうちに廊下の奥へと消えていった。
「なんだ花道のやつ、やけに張り切ってんな」
流川の思いもよらない登場が桜木の闘志に火をつけたというのは明らかだったが、相変わらず判りやすい奴だと水戸は微笑する。
それと同時に先程感じた流川への親近感の理由も自ずと見えてきた。
(なるほど、花道と似てんだな…)
火と水の様に相反する二人だが、実は素直でちょっとつつけば解りやすい反応をする。
意地っ張りで、どこか突っ張っていて…素直じゃない。
そういうところが一緒なんだな、と納得する。
「ほら、ウチらも早く行こ」
「ああ」
そう言って歩き出す馨と流川を、水戸は思い立ったように呼び止める。
「あのさ…、後で練習見に行くよ」
「ホント?…でもどうしたの?改まって。いつも言われなくても皆で見に来てるじゃん」
「そうだっけ?」
「そうだよ、また花道のこと冷やかしにおいでよ」
「試合やってた方が冷やかし甲斐もあるんだけどな。どうせ花道は基礎練だろ?」
「そうだね、まだ無理はできないし、何より基礎は大事だからね」
振り返って水戸と話をしている馨を、流川は隣で黙って見つめている。
それは馨の言葉に同意をしているかのように見えた。
「今日も馨ちゃんが花道のトコ見るんだろ?」
「当然!安西先生直々のお願いだからね!」
「厳しく頼むぜ花道のヤツ、すぐ横道に反れるからな」
「ご安心を!今日は彩子先輩から私専用のハリセン貰う事になってるから!」
((いつの間にそんなモノを…))
水戸と流川の心の声がシンクロする。
余計なモノを作らなくていいのに…と流川は更に思う。
「皆の冷やかしがあった方が花道も燃えるみたいだからさ、見に来てよ」
「ははっ、そうだな」
「私も、頑張るからさ」
「ん?ああ」
一瞬、馨の表情が真顔になる。
今は普段通りにこやかに笑っているが、ほんの僅かの変化を、水戸は見逃さなかった。
「行くぞ」
隣で黙っていた流川が会話の合間を見計らって声をかける。
「じゃあ、後でね!」
ヒラヒラと手を降る馨に合わせて水戸も手を振り返す。
顔には出さなかったが、心はスッキリしなかった。
「お~い洋平、花道見に行こうぜ~」
流川と馨の姿が人混みに消えて行くのを見届けた位のところで、後ろから高宮達の声がかかった。
水戸は自分のモヤモヤした気持ちを見透かされないよう、ニヤッと笑い、振り替える。
「お前ら、やっと来たのか。今日も花道のヤツ基礎練みたいだぜ。イライラしてまたひと暴れするかもな」
「おお!それは期待大!!それこそ冷やかし甲斐があるってもんよ!」
「馨ちゃん、アネゴからハリセン貰うらしいぜ」
「マジか!じゃあ、更に面白くなりそうな予感!!早く行こうぜ!!」
ウキウキと歩き出す面々の後ろを水戸はついていく。
その表情は高宮達とは違って少し曇っていた。
(なんだったんだろうな、あの表情…)
一瞬だけ見せた馨の表情の変化…見間違いか、はたまた自分が気にしすぎているだけなのか。
ただの思い違いだといいんだけど…
学生服のポケットに手を突っ込みながら体育館へと向かった。
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