#23 Reset me
帰りのHRが終わり、生徒が一斉に各々の部活の準備や帰る支度をし始める。
ガヤガヤと騒がしい教室の後ろのドアを真っ先に開けた女生徒が、ドアの向こう側で静かに立つ人物を見つけると、キャッと小さな声を上げた。
悲鳴にも近い声に、何事かと1年7組の生徒はピタッと静かになり、一同後方に注目する。
ドアの向こうにはスポーツバックを肩に携えた長身の男子生徒。
その悲鳴の原因の主がわかるとクラスの女子生徒が一際大きな音量でキャーッ!と歓喜の声を出し、男子生徒は「何だよ…」と悲鳴の理由に不服を感じながら再び身支度を始める。
最初の悲鳴に反応したのは1年7組に在籍する桜木、水戸、馨も同様。
その後起こった7組の女子生徒の悲鳴の直後、桜木の大声がそれと負けない程の音量で上がる。
「あーーーっ!!ルカワてめ一!ここに何しに来た!!」
ドアの前にいた悲鳴の元となった人物…流川を指差し、桜本は一気にヒートアップする。
人差し指を向けられた流川はいかにも面倒くさそうな顔をする。
「てめ一にゃ用はねぇよ」
「なにおう!?このっ!……むぐっ……」
桜木が何か言い返そうとしたところで隣の席の馨が「うるさい」とばかりにその口を手のひらで押さえ込む。
突然口を押さえされた桜木は一瞬息が止まり、モゴモゴと苦しそうに慌てる。
そんな桜木を全く気にせず、ドアの方を見つめる馨はパッとその手を離し、ドアの方へと向かう。
名前こそ呼ばれていないが、流川がこのクラスに用があるとしたら当然馨しかいない。
「よぉ…」
「どうしたの?楓」
他のクラスに顔を出す事など一切しない流川の訪問だけでも大事件なのに、流川と馨の教室での2ショットという普段はお目にかかれない光景に女子生徒達の熱量と声量は更に高まる。
キャーキャーと騒ぎ立てるギャラリーに眉をひそめ鬱陶し気にクラスを睨む馨に対し、そんなものなど耳に入らないのか、流川はお構いなしにいつも通り冷静だ。
「……部活、行くぞ」
「今、HR終わったばかりなんだよ。用意できたら行くからさ、楓、先に行ってて」
「俺も行く」
普段、自分のクラスのHRが終わったら真っ直ぐに体育館に行くはずの流川が今日は違う。
意図があるからこそ、こうして7組の前にいるのである。
馨にはその理由がわかった。
言葉足らずなのは相変わらずで、何を言いたいのか一瞬判らない時があるが、それはいつもの事。
「一緒に行こう」の一言が出ないのは少し不器用で口下手な彼らしい行動だ。
馨は流川の腕を「了解」という意を込めて軽くポンポンと触れる。
「わかった。ちょっと待ってて、急いで用意するから」
そう言って席へと戻る馨を見て、流川はドアから離れ、脇にある柱に腕を組んで寄りかかる。
ここまで来ずとも馨が部活に参加するのは流川も十分承知であったが、今日は事実を目の前にしないとどうも落ち着かなくて足を運んでしまった。
しかしながら、ちょっと顔を出しただけであんなにも大騒ぎするとは……
騒がれる事に対しては耳に入れないようにし、無視して受け流してはいるが、うるさい事には変わりなく、嫌な気分だけが残る。
もう面倒だから必要最低限の用事以外は顔を出すのはやめよう……とため息をつく。
.
ガヤガヤと騒がしい教室の後ろのドアを真っ先に開けた女生徒が、ドアの向こう側で静かに立つ人物を見つけると、キャッと小さな声を上げた。
悲鳴にも近い声に、何事かと1年7組の生徒はピタッと静かになり、一同後方に注目する。
ドアの向こうにはスポーツバックを肩に携えた長身の男子生徒。
その悲鳴の原因の主がわかるとクラスの女子生徒が一際大きな音量でキャーッ!と歓喜の声を出し、男子生徒は「何だよ…」と悲鳴の理由に不服を感じながら再び身支度を始める。
最初の悲鳴に反応したのは1年7組に在籍する桜木、水戸、馨も同様。
その後起こった7組の女子生徒の悲鳴の直後、桜木の大声がそれと負けない程の音量で上がる。
「あーーーっ!!ルカワてめ一!ここに何しに来た!!」
ドアの前にいた悲鳴の元となった人物…流川を指差し、桜本は一気にヒートアップする。
人差し指を向けられた流川はいかにも面倒くさそうな顔をする。
「てめ一にゃ用はねぇよ」
「なにおう!?このっ!……むぐっ……」
桜木が何か言い返そうとしたところで隣の席の馨が「うるさい」とばかりにその口を手のひらで押さえ込む。
突然口を押さえされた桜木は一瞬息が止まり、モゴモゴと苦しそうに慌てる。
そんな桜木を全く気にせず、ドアの方を見つめる馨はパッとその手を離し、ドアの方へと向かう。
名前こそ呼ばれていないが、流川がこのクラスに用があるとしたら当然馨しかいない。
「よぉ…」
「どうしたの?楓」
他のクラスに顔を出す事など一切しない流川の訪問だけでも大事件なのに、流川と馨の教室での2ショットという普段はお目にかかれない光景に女子生徒達の熱量と声量は更に高まる。
キャーキャーと騒ぎ立てるギャラリーに眉をひそめ鬱陶し気にクラスを睨む馨に対し、そんなものなど耳に入らないのか、流川はお構いなしにいつも通り冷静だ。
「……部活、行くぞ」
「今、HR終わったばかりなんだよ。用意できたら行くからさ、楓、先に行ってて」
「俺も行く」
普段、自分のクラスのHRが終わったら真っ直ぐに体育館に行くはずの流川が今日は違う。
意図があるからこそ、こうして7組の前にいるのである。
馨にはその理由がわかった。
言葉足らずなのは相変わらずで、何を言いたいのか一瞬判らない時があるが、それはいつもの事。
「一緒に行こう」の一言が出ないのは少し不器用で口下手な彼らしい行動だ。
馨は流川の腕を「了解」という意を込めて軽くポンポンと触れる。
「わかった。ちょっと待ってて、急いで用意するから」
そう言って席へと戻る馨を見て、流川はドアから離れ、脇にある柱に腕を組んで寄りかかる。
ここまで来ずとも馨が部活に参加するのは流川も十分承知であったが、今日は事実を目の前にしないとどうも落ち着かなくて足を運んでしまった。
しかしながら、ちょっと顔を出しただけであんなにも大騒ぎするとは……
騒がれる事に対しては耳に入れないようにし、無視して受け流してはいるが、うるさい事には変わりなく、嫌な気分だけが残る。
もう面倒だから必要最低限の用事以外は顔を出すのはやめよう……とため息をつく。
.