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#23 Reset me


夕食を取った後はすぐに自室に戻り、ベッドに仰向けになって寝そべった。

いつもならソファに座ってテレビを眺めているのだが、今日はそんな気にはなれなかった。

明かりをつけず、真っ暗な部屋のまま、何を考えるまでもなく、流川はただ天井を眺めていた。

静かな夜の中で、遙か遠くから響いてくるバイクのマフラー音がその静寂を邪魔している。

普段からバイクを走らせている輩がいるせいか、この音には慣れてしまった。

とはいえ、五月蝿いと感じるのには変わりはない。

またこの音を聞く羽目になるのかと、胸の奥から重い息を吐き出す。

溜息の理由はそれだけではなかった。

…今日はなんだか頭を使うような事が多すぎた。

考える事ばかりで、ドッと疲れてしまった。

再び、重い溜息を吐く。

今日はもう考えるのは止めよう…

そう思った途端、頭がボンヤリとしてきた。

このまま、頭を空っぽにしよう…

そう思った時、外に人の気配を感じた。

カチャリ、という玄関の扉の開閉音を、ウトウトとし始めた意識の中で聞いた。


(帰って、きたのか…)


音の主はきっと馨だ。

壁に掛かる時計の針を見ようと顔を横に向けると、サラリと前髪が額をなぞった。

その感触が何故か気持ち良く、それと同時にフワリと眠気に誘われ、一気に瞼が重くなる。

眠気に身を任せる瞬間はとても穏やかで心地がいい。

このひと時を妨げられて不機嫌になるのは当然の感情ではないか。

そう思いながらゆっくりと瞼を閉じる。


コンコン…


控えめなノックの音。

眠リに落ちる寸前、流川は意識の遠くでその音を聞いた。

何か聞こえただろうか…

薄く目を開けて、視線の先にある扉を確認する。

そっと部屋の扉が開き、普段やわらかく照らすオレンジ色の廊下の照明が流川の視界を眩しく照らし、更に目を細める。


「ただいま…」


ノック音と同じくらいの控え目な声が僅かに開かれた扉の向こうから聞こえてきた。


「起きてる?」


寝ている事を想定しての小さな声。

きっと寝ていたら音も無くそっと閉めるのであろう、小さく開けた扉から顔だけを覗かせている。

逆光で顔は見えないが、シルエットだけで誰かはすぐにわかる。


「ん……」


眠気に襲われながらも、流川は今出来る精一杯の返事を搾り出す。

眩しさと眠気で重くなった瞼を開けようとする。


「ごめん、起こした?」

「いや…」


声の感じから眠気が伝わったのだろうか。

少し困り気味の声とオレンジの照明で先程より覚醒した流川は次ははっきりと返事する。

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