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#23 Reset me

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湘北高校体育館。

開放された扉からは時折心地よい風が吹き抜ける。

それは真夏の湿度を含んだ風とは違って吹く度に気持ちよさがあり、秋という季節に移り変わっているのが風で感じる事ができる。

バスケ部員の面々は徹底的に走り込みを行っており、バッシュの音が館内に響く。

それと、もう一つ。


「オラァ!もっと気合い入れて走れ!」

「ほらほらぁ!足がもたついてるわよ-!」

「そーだ!足がもたついてるぞ!」


宮城と彩子の声が互いに負けじと外にまで聞こえんばかりに響き渡る。


(お、鬼だ、この二人は…)


ヘトヘトになっている部員達の殆どが心の中でそう思っていた。

キャプテンになってからの宮城は少し変わった。

「鬼キャプテンになる」と誓い、本を読み漁った宮城はそれを有言実行していた。


「なんだよ、アイツら…息ピッタリじゃねーか…」


三井がフロアの端まで走りきったところで息を整えながらポツリと文句を言う。

今までとは違う雰囲気を醸し出す宮城。

赤木の迫力には程遠いが、それに近付こうとする勢いだけは持っていた。

一気に全国という世界に名を知られた湘北高校。

もっと強くならねば…と意地でも気合いが入っていた。


(ったく、宮城のヤロウ、気張りやがって…)


「キャプテン」という立場になったからには自分が率先して引っ張って行かなければ…という宮城の思いが三井にはすぐに判った。

自分もかつて同じ立場にいたから判る。

「自分が何とかしなければ」と。

そのように思う気持ちは理解できる。

が。


(ま、気負い過ぎなきゃいいんだけどな…)


熱が入りまくりの宮城に、三井は僅かに微笑する。

額の汗を拭っていると、流川の涼しい声が横からかけられる。


「もうバテたんすか、先輩」


三井が屈んでいた分だけ、少しの見下ろされるような形で放たれた言葉は三井の短い導火線を一気に焼ききった。


「はぁ!?誰がバテるか!」

「イキオイがナイ」

「てめー!俺を誰だと思ってやがる!」

「…三井センパイ」

「てめっ…!」


言いかけた三井に遠くから宮城が声を出す。


「三井サーン!」

「あぁ!?」

「今は私語厳禁っすよー!」

「なっ…」


喋っていたのは間違いないが、大声で指摘され恥を晒した形になってしまった三井は苛つく気持ちを何とか抑える。


「…チッ…宮城のヤロウ…」

「あー…怒られた…」

「誰のせいだ!誰の!」


そんな彼等のやりとりを馨は体育館の壁際で腕を組んで眺めていた。


(面白い…)


練習の合間合間に繰り広げられる漫才の様なやりとりは見ていて飽きることはなかった。

無意識のうちにどんどん方向性が変わっていく様は流石としか言いようがない。

なぜか感心をしている馨の目の前で桜木は念入りにストレッチを行っていた。

関節や筋肉一つ一つの存在を確かめるように丁寧に。


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