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#22 旅路


リサが一歩近づく。


「ねぇ、カオル。本当に日本に帰るの?」

「うん…元々お父さんの仕事に着いてきただけだからね…だから…」

「……」

「だから、帰らなきゃ」

「そっか…」

「それに、日本には会いたい人がいるし」

「会いたい人?」

「うん。双子の弟なんだけどね」


するとソフィアがパッと馨の目の前に立つ。


「じゃあ、カオルに似てるの?」

「まぁ、一卵性だから、似てる、のかな?」

「それなら物凄くナイスガイじゃない!」

「ナイスガイって…ちょっと!どうしてそうなるの!?」

「カオル…紹介して!!」


ソフィアが馨にガバッと抱きつく。


「ちょ…ちょっと!」

「ダメよ、紹介してくれなきゃ離さないから!」


そんな、どうやって…と困り顔をしていると、ソフィアがギュッと腕の力を込める。


「紹介しに、また来てくれるでしょ…?」

「!!!」

「ね?会いに来てくれるでしょ?」

「ソフィア…」


ソフィアの体が僅かに震えているのが全身で感じ取れる。


「そうよ!カオル!私にも紹介してよ!」

「ちょっとリサ、私が最初に紹介してもらうんだから!」

「あ、ずるい!」


ギャーギャーと騒ぐ二人が可笑しくて思わず吹き出してしまう。

馨はソフィアの腕をゆっくり解き、次は二人に抱きつく。


「わかった。紹介しに来るよ。二人に」

「カオル…」


そう言って3人は抱き合った。

馨の腕にも力が入る。

もし、この二人に会わなければ、自分は一層深い闇に囚われていたかもしれない。

何もできないまま、何も成長しないまま終わっていたかもしれない。

色んな人と会ってこうしてやってこれた。

今の自分は充分ではないけれど、ここまてやってこれたのは…何よりこの二人のお陰だ。

だから、またこの二人に会いに来ようと思う。

リサとソフィアが泣いている。

それを感じ取った馨は涙をグッと堪えた。

でも、堪えきれずに頬を涙が伝った。


「ありがとう…本当にありがとう…」


馨は二人から離れ、ポケットに入っていたコインを取り出す。


(『またこの土地に訪れる事が出来る』…)


コインを見つめた後、握りしめ、念を込める。


(また来よう、ここに…)


そう願いながら『レイチェル』にコインを入れた。



To be continues

2016.11.11

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