#22 旅路
試合開始直後から馨は徹底的なマークに苦しめられた。
パスを貰ってシュートに跳んでも以前と同じように軽々と阻まれてしまう。
ディフェンスをしている時の相手のオフェンスの当たりも強い。
それにつれて馨の動きも硬くなる。
身長差がある分、ゴール下では相手の方が有利。
どうしても以前受けた強い衝突が脳裏をよぎり、動きを鈍らせてしまう。
こうなる事は百も承知だったが、実際に動きが硬くなると焦りも生じてしまう。
頭では大丈夫だとわかっていても、体がついていかない。
本能からくる感情を消し去る事は出来なかった。
息を吐き出し汗を拭っていると後ろから3人の野次が飛んでくる。
「やっぱり何もできないじゃない」
「そんなんでパス貰う必要ある?」
「大丈夫、今度はボールには触らせないから」
「……チッ」
悔しいが彼女らの言う通りだった。
辛うじてボールを手にしても何もさせてもらえないでいた。
それでもプレイを続けた。
相手チームの攻撃、シュートはリングに嫌われた。
ゴン、という音と共に相手チームがリバウンドを拾った、
…のも、ほんの一瞬。ボールを上から叩き、手から離れたボールをすぐさま取ったのは馨。
しまった、という相手の反応。
「触ったよ、ボール」
「このっ…!」
姿勢を低くして、地面スレスレで左右に小さくドリブルをして隙を伺う。
(シュートなんかさせない)
そんな相手の心境が読める。
数日前に見た山王の9番の姿が浮かび上がる。
何度ブロックされても立ち向かっていった姿を…
そして、「強くなりたくてここに来たんだろ?」というマイケルの言葉がよぎる。
(ブロックされるなら…)
昔テレビで見たNBAの試合の映像が頭の中で流れる。
華麗に舞う選手、綺麗な弧を描くボール…
馨はキュッと口を結ぶ。
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