#22 旅路
数日後、馨は公園へと向かった。
忌々しい記憶の残る公園へ。
そこには馨を馬鹿にした例の3人組が他の相手と3on3をしていた。
コートに近づこうとする足が一瞬迷い、止まる。
怖い…そんな気持ちが生まれてくる。
自分はここに何をしに来たのか…
フーッと息を吐き、意を決してコートに歩み寄る。
それに気付いた3人は、手を止めコート外にいる馨に近付いてくる。
「あら?全然見ないからとうの昔に日本に帰ったと思ってた。まだここにいたの?」
「……」
「今更何しに来たの?」
馬鹿にした態度は相変わらずだ。
馨は表情を一切変えず、低めの声で返す。
「決まってんだろ」
「は?」
「…バスケ」
「何?」
「バスケしにきた」
静かに言う言葉を鼻で笑い飛ばされる。
「アナタ、自分が何言ってるかわかってるの?」
こういう態度を取られる事はとっくに判っていた。
でも、馨の表情は変わらない。
「コートに来たんだから当然でしょ?」
相手を睨みつけたままの馨を見て、3人の表情から笑みはなくなった。
「…ジャップが入るコートなんてないんだけど」
「ある」
「どこにあるっていうの?」
「…あるだろうが、目の前に」
馨は先程まで3on3を行っていたコートを指差す。
「今日はここであんた達とバスケしに来た」
「誰がジャップなんかと組むもんですか」
「フン、誰がアンタらなんかと……相手しにきたんだよ」
「……」
しばらく睨み合った後、馨は3人の横を通り過ぎ、相手をしていたチームの元へ向かう。
「…生意気な」
3人はギリッと馨の背中を睨みつける。
馨は相手に頼み込んでチームのメンバー一人と交代して貰えることになった。
羽織っていた上着をコート脇に置き、軽くストレッチをする。
リサもソフィアも誘わず、一人であの3人の元に行ったのは理由があった。
それは「自分の力で強くなりたい」から。
正直、少し怖い気持ちの方が大きい。
でもああやって啖呵を切った以上後戻りはできない。
後で2人に怒られるだろうな…と思いながら足首をくるくる回した。
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