#3 同じ顔
「…どうしてここにいる」
流川は先程と同じ質問をした。
驚きの絶えない部員達と離れて、表へと繋がる体育館の扉付近で二人は会話する。
フェンスの向こう側では植木が青々と茂っている。
「アメリカから戻ってきたからに決まってんじゃん」
「そうじゃない。なんで、ここにいる」
『なんで』の部分を少し強調し、座り込んでいる馨に合わせて自分も隣に座る。
「そりゃ、愛しの我が弟に会いに」
馨は意地悪く笑うが、
「違うな」
流川はすぐ様否定する。
「う……」
苦笑する馨を見て、流川は「やっぱりな」と思った。
何かを企んでいる時は大抵こんな顔をするからわかりやすい。
それに、それだけの理由でわざわざ帰ってくるとは思えない。
自分と同じく頑固な馨に、それはあり得ない。
「どうしてココにいる。何企んでるんだ?」
「企んでるって…人聞きの悪い…。そうだね。日本でやりたい事、見つけたんだ」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべながら、チラリとこちらを見る。
「………?」
やりたいこと?
よくわからない。
ハッキリ言えばいいのに。
だいたいアメリカに行ったのには理由があるから、じゃなかったのか
アメリカじゃダメなのか?
自分が憧れているアメリカに行ってたクセに、わざわざ日本にくるなんて。
「自分からアメリカに行ったクセに…」
「………」
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