#22 旅路
この季節は日が落ちるのが早い。気づけば辺りは暗くなっていた。
そろそろ部活が終わっている時間だろうか…そう思いながら時計を確認する。
「ただいま…」
玄関の扉の音と共に少しぶっきらぼうな声が聞こえた。
「あら、珍しく早いのね?自主練は?」
「明日、練習試合だから自主練すんなって監督に追い出された」
「あぁ、明日だったわね、四中との練習試合」
「ゆっくり体休めろって」
そう答えながら流川はスポーツバッグを下ろす。
(別に全然ヘーキなのに…)
と不満を顔に出しながら部屋の脇にあるコート掛けにマフラーをかける。
葵はそれを見て「相変わらずだな」とコンロにあるヤカンに火をかける。
「キャプテンになって初めての練習試合ね。どう?調子は」
(………調子、か)
やり場のないストレスをバスケにぶつけていた流川。
キャプテンとして「どう」と聞かれると、「上手くいってる」とは正直言えなかった。
人に指図するのはどうしても苦手で、普段と変わらずプレイする毎日。
そんな自分に監督は何も言ってこない。
だから「間違っている」とも思えない。
でも「これが正しい」とも到底思えない。
自分がキャプテンらしい事をしているのかと言ったら、自分でも何かが違う、としか思えない。
毎日当たり障りなくやっている、そんな感じだ。
「まぁ、どうにかなんとかやってる」
そう言って着替えの為に二階へと向かおうとすると、背後からクスリと笑う声が聞こえた。
「???」
思わず眉間にしわを寄せて振り返る。
「あ、ごめんね、本当にソックリだなと思って」
「???」
「少し前にね、馨から電話があったの」
「馨から?」
その名前にピクリと反応する。
「馨も『どうにかなんとかやってる』んですって」
「……」
「同じ答えね」
「たまたまじゃね?」
「そう?貴方達、リンクする部分沢山あるから」
「…たまたま、偶然だよ」
「言葉だけじゃなくて、行動とか気持ちの事を言ってるの」
「……?」
「何の用もないのにわざわざ国際電話かけるわけないでしょ」
まるで謎かけをされているようなやりとりに対して咄嗟に理解できずにいた。
(リンク…?はて…)
思わず考え込む。
「寂しいんでしょ、馨も」
「…寂しい?」
「見てればわかるわよ」
「…??」
実際に見てないのに「見ればわかる」とはどういうことか。
ますますわからない。
「あんた達そういうとこ無自覚なのね。ほら、いつまでも突っ立ってないで着替えてきなさい。お茶入れるから」
「…あぁ」
そう促され、考えこみながら階段を上がっていく。
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